貴殿のふとした疑問に答えるブログ

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債務の罠 ラオスの高速鉄道は大丈夫なのか?

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写真はwikipediaから参照

東南アジアのラオスで初となる本格的な鉄道が2021年12月に行なわれました。開通するのはラオスの首都ビエンチャンとボーテンを結ぶ420キロで、中国との国境を越えて雲南省の省都である昆明までつながります。ラオスは内陸国で、その多くが山間部のため今まで長距離の鉄道はありませんでした。ラオスとしては悲願の長距離列車です。

 

中国の雲南省とは、南西部にある省でラオス・ベトナム・ミャンマーと国境が接しています。面積は日本と同じくらいで人口は5000万弱いますので、これだけで一つの国のようなものですね。多くの少数民族がいるのも特徴の省です。

 

ラオスは、メコン川が横断する東南アジアの国で、フランス植民地時代の建築物や山岳民族の集落、仏教の僧院などで知られています。人口は710万程度です(ちなみに埼玉県の人口が730万)。人口が少なく、山岳地帯が多いこと、海に接していない事などの理由から経済的にも貧しい国になります。

 

鉄道が通ることで、中国という巨大マーケットにアクセスできますので人々の往来が活発になり経済活動も活性化していきます。加えてラオスにとっては、中国への輸出や観光客の誘致というメリットがあります。対して中国のメリットは「一体一路」構想が加速していきます。というのも中国は、鉄道を中国からラオス・タイ・マレーシア・シンガポールまでをつなぎ、海に出るルートを見つけようとしていますので、ラオスが開通したことは中国にとってプラスになります(現在シンガポールにつながる構想は頓挫しています)。

 

この鉄道はどちらの国にとっても美味しい話に聞こえますが、デメリットもあります。ラオスにおいては鉄道だけでなく高速道路の建設も同時に進められています。そのため鉄道の需要が伸びないのではないかという疑問があります。また、鉄道を通すための総事業費が約60億ドルとされていて、ラオスのGDP(約180億ドル)の3分の1に相当します。全線にわたって険しい山岳地帯を走るため、47%がトンネルということもあり建設費がかさむようです。

 

ラオスは鉄道を通すために借金をしなければなりませんが、その多くが中国からの借入金で、もし返済できなくなったら天然資源・鉄道沿線の土地の使用権の提供、外交面・軍事面での協力を迫るのではないかと懸念されています。これが「債務の罠」というものです。IMF(国際通貨基金)もこの点を警告しています。

 

2ヵ国の夢と希望を乗せて走り出した高速鉄道ですが、今後状況がどう変化していくのかも気になりますね。

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