鉄道が走り始めた頃は蒸気機関車(SL)が主役でした。今でこそ観光の目玉の一つとして各地を走っていますが、普段乗る機会はまずありません。蒸気機関車はあまり見かけないゆえに人気の的となっていますが、昔は煙をまき散らすなどの理由で評判は良くはありませんでした。そのため、当時の国の偉い人や鉄道会社の人たちは可能であれば蒸気機関車ではなく電車を走らせたかったわけですが、電車の登場は1904年まで実現しませんでした。
1904年。日本で一番初めに電化された場所は、甲武鉄道(現在の中央本線)の飯田町駅~中野駅の間で、同年12月には飯田橋駅から御茶ノ水駅まで電化区間が延びました。国鉄が最初に電化したわけではなかったのですね。私鉄はというと、1907年に南海鉄道(現在の南海電鉄)の難波駅~浜寺公園駅の間が電化されています。
日本の大動脈でもある東海道線の電化は1909年の烏森駅(現在の新橋駅)~品川駅でした。東海道線の全線が電化されたのは1956年まで待たなければなりませんでした。日本の鉄道網はどんどん拡張しているのに、電化は遅かったのでしょうか。
蒸気機関車や気動車(ディーゼル車)と比べて、電車には変電所の建設や架線の設置、トンネルの改修作業など莫大な費用と時間がかかってしまいます。なので少しづつしか電化することはできなかったのです。加えて、日中戦争や太平洋戦争などの時期だと変電所などが攻撃されたら電車が動かせなくなるという危惧もあったため電化が遅れてしまったのです。
他の理由として気動車の性能も上がったので電車にする必要性も薄れてきました。現在でもすべてが電化されているわけではなく、幹線や都市部の路線を除くと気動車は多く走っており、北海道や四国や九州では幹線であっても電化されていない場所があります。
電車の特性として急停車や急発進ができることから、発着に要する時間が少なくて済みます。そのため大都市圏では電車が当たり前となっています。東京や大阪、神奈川では全線が電化されています。しかし地方だと必ずしも電車にする必要はなく、気動車の方が設備投資をするよりも安く走らせることができるのです。