貴殿のふとした疑問に答えるブログ

ふと疑問に思う「なぜ?」「どうして?」「〇〇って何?」に答えるブログです。

時代に逆行した乗り物 人車鉄道とは?

写真はWikipediaから参照 熱海の人車鉄道

時代が進むにつれて、より機能的で、より便利なものが生まれます。例えば15年前にはスマートホンはありませんでしたが、今ではほとんどの方が持っていて、スマホ一つあれば買い物から支払い、調べものや動画視聴など何でもできます。文明の進歩を感じますね。乗り物もガソリン車から電気自動車へのシフトなど日々進歩しています。

 

しかし鉄道の歴史において時代に逆行したものがありました。それは何でしょうか。日本に鉄道が走り始めたのが1872年です。新橋から横浜間を蒸気機関車が疾走しました。今までは徒歩や馬車での移動だったのにいきなり鉄道が現れたのですからすごい進歩です。

 

鉄道が走り始めて10年後、日本初の馬車鉄道が誕生します。「東京馬車鉄道」という会社で、日本初の私鉄でもあります。しかし、蒸気機関における鉄道という事であれば、「日本鉄道」や「大坂堺間鉄道」が日本初の私鉄ということになります。

 

馬車鉄道ができて9年後、蒸気でもなく馬車でもない、なんと人力を動力とする人車鉄道が登場したのです。その会社の名前が「藤枝焼津間軌道会社」です(人車鉄道がいつ生まれたかについては諸説あります)。

 

すでに蒸気機関車が登場しているのだから、「なんで20年近くたって人力で動かすんだよ」と考えてしまいますよね。文明が後退しているように思えますが、人力にするきちんとした理由がありました。蒸気機関車を走らせるには多額の費用がかかります。そのため各地に敷設する余裕もありません。でも、人車鉄道なら少ない費用で建設可能な交通手段となり得たのです。

 

しかし人力ですので、何両も連結することはできません。1両(乗客6人)につき2,3人の車丁(客車を動かす人)が必要でしたので、極めて運転効率の悪い乗り物でした。設備投資にかかる費用は安くても人件費がかさむ乗り物でもあったのです。

 

人車鉄道は全国各地で開業しましたが、もともと輸送力が無くスピードも遅かったため、電車やタクシーの登場によりほとんどが姿を消してしまいました。最後の人車鉄道は1959年まで営業をしていた静岡県の「島田軌道」でした。といっても人を運んでいたのではなく、木材などの貨物を運んでいたのです。

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