飛行機事故の報道でよく聞く「ブラックボックス」。大きな事故が起きたあと、いつもニュースで「ブラックボックスが回収されました」と報じられますよね。でも、あれだけ大きな機体がバラバラになっても、なぜブラックボックスは壊れないのでしょうか?今回はその秘密に迫ってみましょう。
■ ブラックボックスって何?
まず、「ブラックボックス」は飛行機の中にある“記録装置”です。正確には2つの装置があります。ひとつはフライトデータレコーダー(FDR)、もうひとつはコックピットボイスレコーダー(CVR)。前者にはスピード、高度、エンジンの状態などのデータが記録され、後者にはパイロットの会話や機内の音が録音されています。つまり、事故の“原因を探る手がかり”がここに詰まっているのです。
■ 「ブラック」なのにオレンジ色?
名前に「ブラック」とついていますが、実際には鮮やかなオレンジ色をしています。これは、海や森に落ちたときでも目立つようにするためです。「ブラックボックス」という名前は、昔は中身が見えないという意味で「ブラック」と呼ばれるようになったという説があります。
■ 壊れないための驚きの構造
さて、本題です。なぜ壊れないのでしょうか?
実はブラックボックスの中には、いくつもの“守りの壁”があるのです。
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チタンやステンレスなどの耐衝撃性に優れた金属で外側を覆っています。
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さらにその中に断熱材があり、高温からも守ってくれます。
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最も中心には、データを記録する部分が入っていて、まるで金庫の中の金庫のような設計です。
この構造のおかげで、1100度の高温にも60分耐えられ、3500Gの衝撃にも耐えることができます。これは、超高層ビルの屋上から落としても壊れないレベルの強さです。
■ 実例:インド洋での奇跡の回収
2009年、エールフランス447便が大西洋上で墜落した事故では、海底4000メートルの深さに沈んだブラックボックスが、なんと2年後に発見され、データも無事でした。このおかげで事故原因が判明し、その後の安全対策に役立てられたのです。
■ どんな情報が入っているの?
ブラックボックスには、およそ25時間分のフライトデータ、そして2時間分のコックピットの音声が記録されます。もしエンジンに異常が起きたら?もしパイロットが何か指示を間違えていたら?そうした事実が全て記録されているのです。まるで「空の探偵」とも言える存在です。
■ それでも壊れることはある?
残念ながら、完全に壊れないわけではありません。極端な高温や長期間の水没などでは、データが消えることもあります。ですが、その確率はとても低く、多くの場合はしっかりと情報が残っています。近年では、水中で自動で信号を出す装置も内蔵されていて、回収もしやすくなっています。
■ 未来のブラックボックスは「クラウド化」?
実は今、ブラックボックスのデータをリアルタイムで地上に送信する技術も研究されています。もし実現すれば、墜落後に探す必要がなくなり、すぐに分析できるようになります。空の安全は、これからさらに進化していくのです。