みなさんは「コメの値段って、どうしてそんなに変わらないんだろう?」と思ったことはありませんか?スーパーで売られているお米、毎年たくさん収穫されるのに、大きく値下がりすることって少ないですよね。野菜なんかは、豊作の年には値段が下がったりするのに、お米はなぜか安くならない……。
この疑問のカギを握っているのが「JA(ジェイエー)」という組織です。テレビのニュースや選挙のときなどで名前を聞いたことがあるかもしれませんが、実際にはどんな団体なのか、そしてお米の価格とどう関係しているのか、この記事でわかりやすく解説していきます。
JAってどんな組織?
JAは「Japan Agricultural Cooperatives(日本の農業協同組合)」の略で、日本語では「農協」とも呼ばれています。全国に支部があり、地域の農家さんをサポートするための組織です。
農家の人たちは、農機具を買ったり、肥料を仕入れたりするときに、JAを通して取引することが多いです。また、自分たちで作ったお米や野菜を売るときにも、JAが間に入ってくれます。つまり、農家にとってJAは「パートナー」であり「販売先」であり「相談相手」でもあるのです。
じゃあ、JAがいるとどうしてコメの値段が下がらないの?
理由は大きく3つあります。
① JAが価格を安定させようとしているから
JAは、お米の価格が急に下がって農家が困ることがないように、価格をある程度コントロールしています。たとえば、お米がたくさん採れて市場で値段が下がりそうなときでも、JAが一定の価格で買い取ることで、値崩れを防ごうとします。
これは農家にとって安心材料になりますが、消費者としては「もっと安くならないの?」と思うかもしれません。
② 「全量買取」の仕組みがあるから
多くの農家は、お米を全部JAに売ります。これを「全量出荷」といいます。JAはそのお米をまとめて大きな取引先に売るのですが、この一括管理によって「市場の価格変動にあまり左右されない」構造ができています。つまり、安売り競争が起こりにくくなっているのです。
③ 生産コストが高いままだから
お米づくりには、たくさんの手間とお金がかかります。肥料代、機械代、人件費……。そのコストが高いままだと、いくらお米がたくさん採れても「安く売ると赤字になる」ため、価格を下げづらいのです。
安くする方法はないの?
もちろん、お米の価格を下げることは理論上は可能です。でもそれには、農家がもっと効率的に生産する方法を見つけたり、JA以外のルートで直接販売をしたりする必要があります。
最近では、「ネット販売」や「ふるさと納税」を使って、お米を直接消費者に届ける農家も増えてきました。こうした新しい取り組みが増えることで、将来的にはお米の価格にも変化が出てくるかもしれません。
JAと政治家は「深いつながり」がある
JAと政治家の関係をひと言で表すと、「相互に利益を与え合う関係」です。つまり、JAは政治家を支援し、政治家はJAを優遇する政策を行うという構図が長年続いてきました。
なぜJAは政治家を支援するの?
JAは日本全国にネットワークを持つ巨大な組織で、たくさんの農家が加入しています。そして、JAの各支部は地域の政治にも深く関わっています。たとえば、選挙のときには次のようなかたちで政治家を支援します:
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組合員への投票依頼
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ポスター掲示や集会の協力
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選挙運動の後方支援
これは「票田(ひょうでん)」と呼ばれるもので、政治家にとっては大きな力です。農村部ではJAの影響力が非常に強いため、JAの推薦を受けられると当選の可能性が高まります。
政治家はJAに何を返すの?
JAの支援を受けた政治家は、その見返りとしてJAや農家に有利な政策を推進します。たとえば:
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コメの価格を下支えする制度(補助金や買い取り制度)
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農地法など農業関連法の改正に慎重な姿勢
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輸入自由化(外国産の安いコメ)への反対
つまり、JAは「農家を守る政策を守ってくれる政治家」を応援し、政治家は「票と支持をくれるJA」の意見を優先するという関係です。
この関係に問題はあるの?
良い面と悪い面があります。
◎良い面:
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農家の生活を守る政策が維持されやすい
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農村の声が政治に届きやすい
△悪い面:
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政策が時代遅れでも変わりにくい
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競争力のある農業への改革が進みにくい
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一部の団体にだけ有利な政治になりがち
つまり、農業全体の発展よりも「既存の仕組みを守ること」が優先されやすいという側面があるのです。
じゃあJAって悪者なの?
いいえ、決してそうではありません。
JAは長年、農家を守ってきた大切な存在です。災害があったときに助けてくれたり、技術指導をしてくれたり、農村の暮らしを支えてきた実績があります。ただ、その仕組みが今の時代にすべて合っているかどうかは、少しずつ見直す必要があるかもしれません。
まとめ:コメの値段が下がらないのは、守られているから
お米の値段が下がらないのは、「農家を守る仕組み」がしっかりしているからです。それを支えているのがJAという組織であり、多くの農家にとっては欠かせない存在なのです。
ただし、時代は少しずつ変わってきています。消費者が安くて美味しいお米を求める中で、農家も新しい販売方法を模索しています。JAもまた、変化に対応していかなければならないタイミングに来ているのかもしれません。