かつて“楽園”と呼ばれた南国リゾート、サイパンやグアム。美しいビーチ、治安の良さ、日本からのアクセスの良さなどで、1990年代から2000年代初頭にかけては絶大な人気を誇っていました。
しかし、現在ではその輝きが少しずつ色あせ、観光客の数も減少しています。かつて当たり前のように聞いた「サイパン旅行」「グアムでバカンス」といったフレーズも、今や少し懐かしく感じるほど。
この記事では、「なぜサイパンやグアムの人気が低下したのか?」という疑問に対して、経済的・社会的・観光政策的な背景を交えて、分かりやすく解説していきます。
サイパンで何があった?日系ホテルの大量撤退の裏側
今ではあまり知られていませんが、かつてのサイパンには多くの日系ホテルが立ち並んでいました。日本資本によるリゾート開発が進み、多くの日本人観光客が安心して滞在できるような環境が整っていたのです。
しかし、状況が一変したのはサイパン政府と日系ホテルの対立が表面化してから。
当初、日系ホテルは現地政府の課す税金に応じて経営を続けていましたが、サイパン政府は財政難などを背景に**「もっと税金を支払え」と税率を引き上げ続けた**のです。
日系ホテル側は次第に経営が圧迫され、「これ以上の税負担は耐えられない」と反発するようになります。そして最終的には、政府との対立が決定的となり、日系資本は次々とサイパンから撤退。
観光の大黒柱だった日本人観光客も、それに伴って激減していったと言われています。
アクセスと魅力の変化:なぜ他の国が選ばれるようになったのか?
近年、韓国・台湾・タイ・ベトナムなどのアジア各国が観光地として急成長を遂げています。LCC(格安航空会社)の普及により、「短時間・低価格」で海外旅行が可能になり、旅行者は「もっとコスパが良くて、新しい体験ができる場所」を求めるようになりました。
その一方で、サイパンやグアムの魅力は長年変わらず、「海とホテルとショッピング」という定番に留まっている印象が否めません。アクティビティの幅が広がらない、話題性が薄いという点で、他の地域に押される結果となっています。
円安と物価高のダブルパンチ
ここ数年、急速に進んだ円安も海外旅行離れの一因です。サイパンもグアムもアメリカ準州のため、通貨はドル。
つまり、円安の影響を最もダイレクトに受ける地域の一つなのです。
さらに、現地の物価も年々上昇しています。ホテル宿泊費、レストランでの食事代、アクティビティの料金など、「高いのに内容は以前と変わらない」という不満も多く見られます。
便数の減少と「行きづらさ」
新型コロナウイルス以降、多くの国際便が減少しました。サイパンやグアムも例外ではなく、日本からの直行便が減ったことで、「行きたくても行けない」「乗り継ぎが面倒」という声が増えています。
航空便の回復が遅れたことで、旅行者は自然と「他に行きやすい場所」へとシフトしていったのです。
SNS時代の弱点:映えない・話題にならない
今や旅行先の選定に大きな影響を与えているのがSNSです。インスタグラムやTikTokで「バズる」観光地は一気に注目を浴びます。
しかし、サイパンやグアムはインフルエンサーによる発信が少なく、SNS映えする最新スポットも乏しいのが現状です。過去の思い出として語られることはあっても、「今すぐ行きたい!」と思わせるだけの魅力を発信できていないのが人気低下の大きな要因でしょう。
まとめ:今こそ見直されるべき“原点のリゾート”
確かに、かつての輝きに比べれば、サイパンやグアムの人気は落ち込んでいます。ですが、それでも変わらない魅力もあります。透明度の高い海、治安の良さ、のんびりとした時間の流れ。
「刺激よりも癒やしを求める旅」には、これほど最適な場所も少ないでしょう。
今後、観光政策の見直しや新しい体験型施設の開発などが進めば、再び注目を集める日が来るかもしれません。