想像してみてください。スーパーの棚にいつものお米やパンが並んでいない日が来たら、あなたはどう感じますか?
「そんなこと起きるわけない」と思うかもしれません。けれど実は、世界中で食糧をめぐる争奪戦が静かに進んでいるのです。
この記事では、「食糧安全保障」というテーマについて、世界と日本の現状を比較しながら、できるだけわかりやすく、そして少し未来を想像しながらお伝えします。
食糧安全保障とは何か?
食糧安全保障(Food Security)とは、すべての人が常に十分な量の安全で栄養のある食べ物を、身体的にも経済的にも手に入れられる状態のことを言います。
つまり、「いつでも、どこでも、誰でも、安全な食べ物がある」ことがゴールです。
この言葉は、単なる「飢餓をなくす」という意味を超えて、国の戦略にも関わるとても重要な考え方なのです。
日本の現状:食べ物の6割は外国から
私たちが毎日食べているもののうち、実はおよそ6割が外国からの輸入です。
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小麦:85%以上がアメリカやカナダなどからの輸入
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大豆:90%以上が輸入
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トウモロコシ:ほとんどが輸入(家畜のエサに)
つまり、外国の農業がストップすれば、日本の食卓も止まってしまうかもしれないということです。
たとえば、戦争や干ばつ、輸出制限などが起きれば、日本はすぐに影響を受けます。最近ではウクライナ情勢による小麦価格の高騰が、その代表例です。
世界ではどうなっている?
それでは、他の国々はどうでしょうか?
アメリカ:自給率は100%以上
アメリカは広大な土地と高い農業技術を持ち、国内で十分すぎるほどの食糧を生産しています。輸出国として世界中に食糧を提供しています。
フランス:農業が国の誇り
フランスでは「農業は文化」と言われるほど、国をあげて農業を支えています。食料自給率は120%以上。国内の食を守る仕組みが整っています。
中国:自給率を高める政策
中国も13億人以上の人口を支えるため、自給率を重視しています。耕作地が少ないため苦戦していますが、農業技術の導入や輸入先の多様化など、国をあげた戦略があります。
このように、多くの国は**「自国で食を守る」**ことを重要視しています。
なぜ日本は食糧安全保障に弱いのか?
日本は狭い国土と限られた耕地面積、そして高齢化による農業人口の減少という課題を抱えています。
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農業従事者の平均年齢は68歳以上
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耕作放棄地が全国で増加
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農産物の価格競争に勝てず、国内生産が減少
これにより、ますます輸入への依存が進み、“食”のリスクが高まっているのが現実です。
もし外国から食料が入ってこなくなったら、私たちの生活は大きく変わってしまいます。以下のような現象が起こると考えられます。
1. スーパーの棚がガラガラになる
輸入に頼っている小麦・大豆・トウモロコシなどが入ってこないと、
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パン
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麺類(ラーメン、うどん、パスタ)
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豆腐や納豆
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牛乳・卵・肉(家畜のエサも輸入)
などがどんどん品薄になっていきます。
商品が少なくなれば、当然値段が高騰します。
2. 食料価格が急上昇する
食べ物の数が足りない=争奪戦になります。
少ないものを多くの人が欲しがれば、値段は跳ね上がります。たとえば、
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食パンが1斤500円以上になる
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野菜1玉が300円、500円になる
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お弁当の値段も2倍、3倍に
お金があっても買えない状況が起きる可能性もあります。
3. 飲食店が営業できなくなる
レストランやコンビニ、ファストフードは、原材料の多くを輸入に頼っています。
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ハンバーガーのバンズ(小麦)
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フライドポテト(アメリカのジャガイモ)
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チキンや牛肉(ブラジルやオーストラリア)
こうした材料が入らなければ、お店は閉店せざるを得ません。
4. 栄養バランスが崩れる
外国からの果物や野菜、タンパク源が減ることで、私たちの食事は偏りがちになります。
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ビタミン不足
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タンパク質不足
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カロリー過多(ごはんばかり食べる)
健康被害も出てくる可能性があります。
5. 社会全体に不安と混乱が広がる
食料は、生きるために欠かせない「命のインフラ」です。
それが不安定になると、人々はパニックを起こしやすくなります。
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買い占めや買いだめ
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暴動やトラブル
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政治への不満や混乱
社会の安定が大きく揺らぐことになります。
未来のごはんを守るために、今できること
では、私たち一人ひとりにできることは何でしょうか?
1. 地元の食材を選ぶ
地元で作られた野菜やお米を選ぶことで、国内の農業を応援できます。
2. 食べ物を大切にする
日本では、年間約600万トンの食料が「まだ食べられるのに捨てられている」と言われています。まずは無駄を減らすことから始めましょう。
3. 食について考える機会を増やす
学校や家庭で「このごはん、どこから来たんだろう?」と話すだけでも、食糧への意識が高まります。
まとめ:食べ物は当たり前ではない
普段、当たり前のように食べているごはん。でも、その背景にはさまざまな国の努力やリスクが存在しています。
世界と比べて、日本はまだまだ「食」を守る力が弱い国。だからこそ、私たち一人ひとりの選択が、未来の食卓を守る力になります。
今日のごはんに、ちょっとだけ「ありがとう」と思えるようになったら、それが食糧安全保障の第一歩かもしれません。