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江戸幕府の「金欠対策」がすごい!小判の価値がどんどん下がった理由とは?

写真はWikipediaから参照 慶長大判 金貨

江戸幕府はお金が足りなくなると、小判に含まれる金の量を減らしていきました。「元禄小判 → 享保小判 → 天保小判」と、時代が進むごとに金の割合がどんどん減り、最後は本来の価値の半分以下に…。当然、当時の人々は大混乱しました。なぜこんなことが起こったのでしょうか?


なぜ江戸幕府はお金が足りなくなったのか?

江戸時代、日本は「鎖国」をしていました。貿易はオランダや中国など一部の国としか行えず、日本にあった金や銀がどんどん海外へ流れてしまいました。また、戦国時代が終わって平和になると、武士たちは戦いで活躍する場を失い、経済的に苦しくなりました。

さらに、江戸の街がどんどん大きくなり、道路の整備や治安の維持など、幕府が使うお金が増えていきました。しかし、幕府は新しい税を簡単に増やせなかったため、財政が厳しくなっていったのです。


幕府のとった驚きの対策「小判の改鋳」

そこで幕府が考えたのが、「小判の金の含有量を減らす」ことでした。

小判は金で作られていましたが、その金の量を減らし、代わりに銀や銅を混ぜて作り直したのです。こうすると、同じ量の金でより多くの小判を作れるため、見た目の上ではお金が増えたように見えます。しかし、これは「見た目は同じだけど、中身は薄くなったお金」だったのです。

実際に、江戸時代には以下のように小判が変化しました。

  • 元禄小判(1695年) → 金の含有率:83%
  • 享保小判(1714年) → 金の含有率:56%
  • 天保小判(1837年) → 金の含有率:44%

特に元禄小判から享保小判に変わったとき、大きく価値が下がりました。


どうして小判の価値が下がるの?

ここで、「見た目は同じ小判なのに、なぜ価値が下がるの?」と思うかもしれません。分かりやすく、チョコレートで例えてみましょう。

① 昨日までのチョコレート
本物のチョコがたっぷり入った甘くておいしいチョコレートバーが100円で売られています。

② 今日からのチョコレート
見た目は同じですが、チョコレートの量を半分にして、代わりにココア風味の小麦粉を混ぜました。でも、値段は変わらず100円のまま。

③ お客さんの反応
お店に来た人たちは、「なんか前より味が薄いぞ?」と気づきます。同じ100円なら、本物のチョコがたくさん入ったものを買いたくなりますよね。だから、新しいチョコの価値は前より下がってしまうのです。

小判も同じで、中に入っている金の量が減ると、人々は「前より価値が低い」と考えるようになり、小判1枚で買えるものが減ってしまうのです。


人々の反応と影響

当然、当時の人々は大混乱しました。たとえば、今まで「小判1枚で買えた着物」が、「小判1枚では買えなくなった」ようなものです。物の値段が上がり、庶民の生活が苦しくなりました。

また、商人たちも困りました。「どの小判で支払いを受けるか」を慎重に考え、新しい小判を受け取らない店も出てきました。外国との貿易でも、「日本のお金の価値が下がっている」と見なされ、日本の信用が低くなってしまいました。


それでも幕府が改鋳を繰り返した理由

では、なぜ幕府はこんなことを繰り返したのでしょうか?理由は単純で、「すぐにお金が必要だったから」です。

幕府の財政が苦しくなると、目の前の問題を解決するために「とりあえずお金を増やそう」と考え、小判の金の割合を減らしました。しかし、そのたびに物価が上がり、庶民の暮らしは厳しくなっていきました。

さらに、日本人は昔から「お上(幕府や政府)の決定には従う」傾向がありました。武士も庶民も、「幕府が決めたことだから仕方ない」と受け入れた人が多かったのです。もちろん、不満を持つ人もいましたが、大きな反乱には至らず、社会はなんとか回り続けました。


その後、小判の価値はどうなったのか?

幕末になると、さらに幕府の財政は悪化しました。そして、幕府が倒れ、新しい明治政府が誕生すると、貨幣制度も大きく変わりました。明治政府は「円」を導入し、小判は廃止されました。こうして、江戸時代に繰り返された「小判の改鋳」は終わりを迎えたのです。


まとめ

江戸幕府の財政難を解決するための「金欠対策」、それが小判の金の含有量を減らすことでした。これにより、短期的には幕府のお金は増えましたが、庶民の生活は苦しくなり、物価の上昇を招く結果となりました。

現代でも、お金の価値(インフレやデフレ)は私たちの生活に大きな影響を与えます。江戸時代の「小判の改鋳」は、お金の価値がどのように変化し、人々の暮らしにどう影響を与えるのかを考える上で、とても興味深い出来事なのです。

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