「トルコ」と聞くと、異国情緒あふれる街並みや美味しいケバブを思い浮かべるかもしれませんが、実はこの国は世界の交通の要所として、歴史的にも地理的にも重要な役割を担ってきました。
まず、トルコはヨーロッパとアジアをつなぐ場所に位置しています。イスタンブールはその象徴的な都市で、ボスポラス海峡を挟んでヨーロッパ側とアジア側に街が広がっています。この海峡には「ボスポラス大橋」や「7月15日殉教者の橋」などが架かり、日常的に両大陸間の行き来が行われています。まるで二つの大陸を手に取るように行き来できる場所は、世界でも珍しいのです。
さらに、トルコは中東やアフリカへの通り道としても重要です。トルコの南側に広がるシリアやイラク、さらに南下すればサウジアラビアやエジプトなどに繋がります。古代から商人たちはこのルートを利用して香辛料や絹などの貿易を行ってきました。特に「シルクロード」は中国から中東、ヨーロッパに続く貿易路として栄え、その中心にあったトルコは「東西の交差点」として繁栄しました。
海の交通でも、トルコは欠かせません。北側には黒海が広がり、南側には地中海があります。黒海はロシアやウクライナなどの国々とつながっており、これらの国が貿易を行う際には必ずトルコ周辺を通る必要があります。特に「ダーダネルス海峡」と「ボスポラス海峡」は、その要所として何世紀にもわたり争いの的となってきました。今でもロシアが黒海から地中海に出るためには、トルコの海峡を通るしかないため、非常に重要な地点となっています。
このように交通の要所としての地理的条件は、トルコの歴史にも大きく影響しています。オスマン帝国は、こうした交通の利点を活かして広大な領土を築きました。特にイスタンブール(当時のコンスタンティノープル)は東西の文化が交わる場所として栄え、交易の中心地として莫大な富を得ました。オスマン帝国の支配下では、アジアからの香辛料やインドの宝石、ヨーロッパの工芸品などがイスタンブールを経由して各地に運ばれました。
現代でも、トルコはその地理的特性を活かし、交通や物流の重要拠点となっています。例えば、イスタンブール空港は世界でも有数の国際ハブ空港で、ヨーロッパ・アジア・アフリカの各地へ多くの便が行き交います。また、「バクー–トビリシ–ジェイハン(BTC)パイプライン」はカスピ海の石油を地中海に運ぶため、トルコを経由しています。これにより、エネルギー供給の安定にも大きく貢献しています。
このように、トルコは「陸・海・空」のすべてで重要な交通の要所として、今も昔も世界をつなぐ架け橋の役割を果たしてきました。次にイスタンブールを訪れる機会があれば、街を行き交う人々や文化の多様性に注目してみると、トルコの歴史の重みをより深く感じられるかもしれません。