昔は沖縄にも路面電車が走っていましたが、現在において日本最南端を走っている路面電車は鹿児島市電になります。鹿児島市内13.1キロの路線で運行されており、鹿児島市民の足となり多くの人に利用されています。
鹿児島は比較的温暖な地域ですので、札幌や函館のように雪の心配はありません。その代わりに桜島の火山灰に毎年悩まされています。「たかが灰でしょ」と感じるかもしれませんが、レールに火山灰が積もると車輪が絶縁状態になり、市電の運行に支障をきたしてしまいます。
そこで、レール上に積もった火山灰を流すために「散水電車」が誕生します。札幌には積雪時に雪を払いのけるササラ電車を走らせます。竹製のほうきを回転させてレール上の雪を掃いていくのです。ササラ電車が除雪の役割なら、鹿児島市電の散水電車は除灰の役割を担うのです。散水電車は6トンの水タンクを車内に積み、前面にはスプリンクラーを搭載しています。芝生を敷いた軌道に水を撒くのが仕事で、主に営業時間外の夜間に活動しています。ですから市内に住んでいても、普段はめったに見かけることのない車両です。
さて、もう一つ面白い車両があります。それが「芝刈り電車」です。上記でも触れていますが、市電が走る部分には芝生が敷いてあります。他の地域ではあまり見かけませんね。芝生ですので成長していきます。そのため定期的に芝を刈る必要があるのですが、人力で刈るより芝刈り電車の方が効率がいいとのことで採用されました。
芝刈り電車とはいっても、動力や電源装置がないので単独で運行することができません。そのため機関車役の散水電車を連結し、けん引されながら芝刈作業を行っています。刈り取った芝は、後部のホースで吸い込まれていきます。芝刈り電車は、人が歩くくらいの走行速度での作業となることから、市電の最終運行が終わった深夜帯に活動しています。これも見れたらラッキーですね。
では、なぜ軌道に芝生を敷いたのでしょうか。理由としては、ヒートアイランド現象の緩和や騒音の低減、美しい都市景観づくりを目的として、2006年度から全国で初めて路面電車の軌道に芝生を敷いたようです。確かに芝が敷かれていると見た目もきれいですし、涼しげに感じますよね。
鹿児島市電は100年以上走り続けています。ぜひ鹿児島に立ち寄った際には市電に乗ってみるのはいかがでしょうか。今回は縁の下の力持ちの車両の紹介でした。