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現代のアヘン戦争?――フェンタニルが世界をむしばむ

アヘン戦争

19世紀、中国の清王朝は「アヘン戦争」によって大きな打撃を受けました。アヘンという麻薬がイギリスによって大量に持ち込まれ、多くの人が中毒になり、国全体が弱体化しました。そして、ついに清はイギリスに屈し、不平等な条約を結ばされました。では、これと似たようなことが現代でも起きているとしたらどうでしょう?

実は、今のアメリカやカナダでは「フェンタニル」という強力な麻薬が社会をむしばみ、多くの人の命を奪っています。この現象は「現代のアヘン戦争」とも呼ばれています。なぜなら、かつての中国と同じように、この危険な薬物が外国から流入し、人々の生活を破壊しているからです。では、フェンタニルとは何なのでしょうか?


フェンタニル――100倍強力な麻薬

フェンタニルはもともと医療用の鎮痛剤として作られました。ガンの末期患者の激しい痛みを和らげるために使われるほど強力な薬です。しかし、その効果の強さゆえに、悪用されるようになりました。特に問題なのは、ヘロインの約50倍、モルヒネの100倍もの強さがあることです。ほんの少量でも致死量に達してしまうため、非常に危険です。

例えば、2022年にアメリカで薬物による死亡者数は約10万人に達しましたが、その大半がフェンタニル関連でした。しかも、フェンタニルは見た目では普通の薬と区別がつかず、多くの人が知らないうちに摂取し、命を落としています。


どこから来るのか?

では、この恐ろしい麻薬はどこから流れてくるのでしょうか? その多くが中国で製造され、メキシコのカルテル(麻薬組織)によってアメリカに密輸されています。これは、かつてイギリスがアヘンを清に送り込んでいた構図と似ています。当時、イギリスはアヘンを売ることで巨額の利益を得ていましたが、今の犯罪組織もフェンタニルで莫大なお金を稼いでいます。

アメリカ政府はこれを阻止しようとしていますが、フェンタニルは小さな量でも密輸できるため、取り締まりが難しいのが現状です。


フェンタニルの恐怖――「ゾンビ化する街」

フェンタニルの影響が特に深刻な都市の一つが、アメリカのフィラデルフィアです。「ケンジントン地区」という場所では、多くの人がフェンタニル中毒になり、道端で意識を失い、体がゆがんだまま動けなくなる様子が見られます。その姿は「ゾンビ」とも呼ばれ、まるでホラー映画のようだと報道されることもあります。

また、カナダのバンクーバーも深刻な状況です。特に「ダウンタウン・イーストサイド」という地区では、フェンタニルの影響で薬物依存者が増え、街の治安が大きく悪化しています。警察や医療関係者は対応に追われていますが、根本的な解決には至っていません。


なぜ止められないのか?

フェンタニルの問題が深刻化している理由の一つは、安価で簡単に手に入ることです。たった数ドルで購入できるため、貧困層やホームレスの人々が手を出しやすくなっています。また、SNSやダークウェブ(インターネットの裏側の世界)を通じて、簡単に取引が行われています。

さらに、麻薬組織が密かに他の薬物にフェンタニルを混ぜて販売することもあり、知らずに摂取して命を落とすケースも多発しています。これにより、フェンタニルの被害は広がり続けています。


「現代のアヘン戦争」は終わるのか?

かつて清はアヘン戦争によって国が弱体化し、最終的に滅亡への道をたどりました。現在、アメリカやカナダはフェンタニル問題によって社会不安が広がり、犯罪やホームレスの増加など深刻な影響を受けています。このままでは、かつての清と同じような未来が待っているかもしれません。

しかし、各国はこの危機に対抗しようとしています。アメリカではフェンタニルを含む薬物を密輸する組織への制裁を強化し、中国にも協力を求めています。また、依存症の人々を救うための治療プログラムや支援策も進められています。

それでも、フェンタニルの流通は止まっておらず、「現代のアヘン戦争」はまだ続いています。

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