
世界には190以上の国がありますが、その中で「広い海域」を持っている国は限られています。実は、日本はそのひとつ。しかも、日本の200海里水域(排他的経済水域:EEZ)の海水の体積は世界第4位なのです。
1位アメリカ、2位オーストラリア、3位キリバスに次いで、海に囲まれた日本が堂々の4位。けれど、この「海の体積」がどんなメリットをもたらすのか、詳しく知っている人は意外と少ないかもしれません。
今回は、この“海の大きな体積”が私たちにどんな未来をもたらすのかを、最新の技術やデータを交えてご紹介します。
■「海の体積」とは何か?そして日本はどれだけ広いのか?
まず、面積と体積の違いを考えてみましょう。
海の面積は「広さ」、体積は「深さも含めた大きさ」です。たとえば、バスタブとプールが同じ面積でも、深さが違えば水の量(=体積)も違ってきますよね。
日本の200海里水域(EEZ)の体積は、約15,800,000立方キロメートルにもなり、世界第4位です。
■なぜ「体積」が重要なのか?──面積よりも深さがカギ
多くの人は「海の広さ=魚がたくさんとれる」といったイメージを持つかもしれません。しかし、現代では海の深さ(=体積)こそが、新たな資源のカギとなっています。
たとえば、深海には太陽の光が届かないほどの低温で安定した環境が広がっており、この特性を活かした技術開発が進んでいます。
以下のような応用が注目されています:
■海の体積を活かす最新技術【具体例】
① 海水温度差発電(OTEC)
海の表面は太陽で温められ、深海は年間を通じて約5度前後の低温。この温度差を使って電力を生み出すのが「海洋温度差発電(OTEC)」です。
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発電に必要な温度差は約20℃。日本の南西諸島周辺では条件を満たしています。
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実証実験では、沖縄県久米島で数百キロワット規模の発電が成功しています。
② 海洋深層水の冷媒利用(海の天然エアコン)
冷たい深層水を使って、建物や農業施設の冷却に活用する例もあります。
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久米島では、深層水を使った海洋深層水クーラーで、施設の冷房や水産養殖にも活用。
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この方法はCO₂を出さないため、地球温暖化対策にも効果的。
③ 海水の淡水化と金属・ミネラルの採取
海水から飲み水を作る「淡水化」技術や、海水に含まれるマグネシウム、リチウム、ウランなどの微量金属を抽出する研究も進んでいます。
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日本の淡水化施設はまだ少ないですが、中東では生活用水の大半を海水から生産。
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日本近海の海水からは、年間数千トン規模のリチウム資源が潜在的に得られる可能性も。
■問題点と今後の課題
もちろん、海の体積を活用するには、まだまだ技術的・経済的な課題もあります。
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海洋温度差発電は、初期投資が高く、商業ベースには至っていません。
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深海資源の採取には、海洋環境への影響を最小限にする慎重な設計が必要です。
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日本は海洋面積が広くても、資源開発や管理に必要な人材と資金がまだ不十分。
ですが、それでもなお、**この体積の大きさは「未来のエネルギー源・水源・資源庫」**として、日本に大きな可能性を与えています。
■まとめ:日本の「海の体積」は未来へのチャンス!
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日本の海の体積は世界第4位、これは想像以上に大きな可能性。
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海水そのものを資源として活用する時代が来ている。
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冷たい海洋深層水、海水の温度差、海中の金属イオン……それらは今後のエネルギーや産業にとって欠かせない要素。
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日本の海は、ただの「漁場」ではなく、未来を支える「研究と技術の実験場」になり得る。
今後、地球の限られた資源が問題になればなるほど、この見えない“体積資源”が注目される時代がきます。
私たちの足元には、実はこんなにも大きな未来が広がっているのです。