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台風のとき、海の魚と川の魚はどうやって生き延びているのか?

日本では毎年のように台風がやってきます。強い雨と風、そして川の氾濫や海の大しけ。人間にとっては大きな被害をもたらす存在ですが、ふと考えると不思議なことがあります。海や川に住んでいる魚たちは、あの荒れ狂う自然の中で一体どうやって過ごしているのでしょうか。今回はその秘密に迫ります。

台風の海で起きていること

まず海から見てみましょう。台風が近づくと、海は大きなうねりと高波に襲われます。海面は猛烈にかき混ぜられ、酸素や栄養塩が普段よりも多く混ざり込みます。一見すると魚にとって良さそうですが、実際には強い潮流と水温の急激な変化が起こるため、多くの魚にとっては大きなストレスになります。

しかし、魚はこうした環境変化に対応できるようになっています。表層近くを泳ぐ小魚やプランクトンは強い波に流されやすいため、台風の接近を感じると体のセンサーが反応し、本能的に深い場所へと潜っていきます。水深20メートル、30メートルといった深さでは、表面のような激しい揺れはほとんど届かないからです。大型の回遊魚も、同じように比較的安定した深場に避難します。つまり、魚たちは「海の安全地帯」を知っているのです。

一方で、サンゴ礁や浅瀬に住む魚たちは逃げ場が限られています。そのため、岩陰や海底の砂に潜ってやり過ごす行動をとります。ダイバーが観察すると、台風前には魚たちが普段よりも活発に泳ぎ回り、餌をたくさん食べて体力を蓄える様子が見られることもあります。嵐の間はほとんど動かず、体力を温存するのです。

川で魚が直面する危機

次に川の場合を考えてみましょう。台風による豪雨は川に大量の雨水を流し込み、急激な増水を引き起こします。流れは濁り、石や木の枝、土砂が大量に押し流されます。川魚にとってこれはまさに命懸けの試練です。

渓流にすむイワナやヤマメのような魚は、流れに逆らって泳ぐ力が強いですが、台風時の濁流にはとても耐えられません。彼らは川底の岩のすき間や岸辺の木の根の下に身を隠し、流されないようじっとしています。また、一部の魚は流れの緩やかな淵に移動して、濁流が過ぎるのを待ちます。まるで人間が避難所に逃げ込むのと同じです。

下流域や湖沼に住む魚は、濁りで視界が悪くなるため捕食活動を一時的にやめることがあります。水質が急激に変化するため、呼吸にも影響が出ます。魚のエラは水中の酸素を取り込むための器官ですが、土砂や泥が多く混ざると呼吸が苦しくなります。そこで多くの魚は動きを抑え、なるべくエネルギーを消費しないようにして嵐をやり過ごします。

台風後の魚たちに起きる変化

台風が通り過ぎると、魚たちの世界は一変します。海では、表層と深層の水がかき混ぜられることで酸素が増え、プランクトンが大量に発生します。そのため、一時的に魚が増えることもあります。しかし、同時にサンゴ礁や海藻が壊され、生息地を失う魚も出てきます。つまり、台風は魚にとって「試練であり恵み」でもあるのです。

川ではもっと劇的です。川底の地形が変わり、石が動き、砂利が堆積して流れのコースが変わることもあります。魚にとっては住み慣れた家がなくなるようなものです。しかし同時に、新しい淵や止水域ができることもあり、そこが新たな隠れ場所や繁殖の場となります。自然の営みは破壊と再生を繰り返しているのです。

人間への示唆

魚たちの行動から学べることもあります。台風のような大きな自然災害は、人間にとっても避けようのないものです。しかし魚たちは、本能的に「より安全な場所」へ移動し、じっと耐えるというシンプルな方法で生き延びています。無理に逆らわず、嵐が過ぎるのを待つ。その柔軟な姿勢は、人間が自然災害に向き合う際のヒントにもなるでしょう。

まとめ

台風の時、海の魚は深場に避難したり岩陰に身を隠し、川の魚は淵や岩のすき間に潜り込んで耐えています。彼らにとって台風は大きな試練ですが、同時に新たな環境をもたらす出来事でもあります。自然は厳しくもあり、同時に豊かさを生み出す存在です。私たちが台風に備えるとき、魚たちの知恵としなやかな生き方に思いを馳せるのも良いかもしれません。

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