移民と聞いても、日本人にはそんなに馴染みがあるものではありません。なぜなら日本は島国で、安易に日本に入国することは出来ないからです。しかし地続きの国において移民問題は深刻になっています。ヨーロッパやアメリカなどはその典型です。シリア人やロヒンギャなど、紛争や迫害で国を出ざるを得ない人たちを難民と呼びますが、移民は裕福な国や環境の良い国を目指して移住国を離れる人を指します。そうなるとどうしても先進国が移民の対象になることが多いでしょう。
しかし今回の話は、裕福な国や環境が整った国に移民する人が増えるといったものではありません。気温の上昇によって移民が増えていくのです。どういう事でしょうか。
「このまま気温が上昇し続けるとやばい。だからみんなで話し合おう」という会議が2021年11月にイギリスで行なわれました。この会議はCOP26(国連気候変動枠組み条約締約国会議)と呼ばれています。世界各国が協力して気温上昇を抑えるために話し合われました。
もし気温が上昇していくなら、熱による海水の膨張や、氷床が解けだして海面が上昇します。そうなると海に接している多くの都市は冠水してしまいます。世界的に21世紀中に最大82㎝上昇すると予測されており、日本においては1メートル海面上昇すると全国の砂浜の9割以上が消失すると推測されています。
日本で考えてみてください。日本の多くの都市は海に接しているのではないでしょうか。東京、大阪、名古屋など人が住んでいる地域はだいたい海沿いです。
アメリカでもニューヨーク、マイアミ、ニューオーリンズ、ボストンなど大都市も例外ではありませんし、上海、香港、リオデジャネイロ、ムンバイなども海面上昇によって冠水する都市に該当します。すでにキリバスやツバルなどの島国では海面上昇によって住居の移動を余儀なくされている状況になっています。
気温上昇は冠水だけでなく、乾燥や干ばつも引き起こします。地中海性気候のスペイン、イタリア、ギリシャなどはこれらの問題とも闘わなければなりません。
そうなると、数十年後には人の住める場所への移動が始まります。つまり移民が増えるのです。その場合、数億人単位での移動になると言われています。日本は国土のほとんどが山ですので、少ない平地を見つけて人々が押し寄せてくるかもしれませんね。東京の湾岸エリアに買った土地も数十年後には海の中かもしれません。温暖化による影響は世界的に見ても待ったなしと言えるでしょう。