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ふと疑問に思う「なぜ?」「どうして?」「〇〇って何?」に答えるブログです。

江戸時代の人たちって自由に旅行に行けなかったってほんと?

会社や学校の休みになると「今年の夏は海や山に行こう」「ディズニーランドに行こう」「実家に帰省しよう」と考える人はたくさんいます。お金と時間があれば旅行に行きたいですよね。現代は自分の好きなところに旅に出掛けられますが、江戸時代はそうはいきませんでした。なぜでしょうか。

 

まずは、そもそも旅行に行く余裕がなかったことが挙げられるでしょう。今よりも生活は厳しく、とりわけ農業を営んでいる民衆は何週間もまとまった休みを取るわけにはいきません。今のように有休があるわけでもないし、車や鉄道もない時代でしたので、遠出自体が難しい時代でした。

 

そして旅を難しかった理由のもう一つは、人の移動が制限されていたからです。これはどういうことでしょうか。江戸時代の藩は、現代とは違って独立国家的な存在でした。他の藩の者が勝手に自分の藩にやってきたり、自分の藩から他の藩に逃げるのは好みませんでした。そこで藩を出る場合には許可が必要となったのです。

 

例えば、参拝や湯治のため、公用や商用の旅、婚姻や奉公のためなど藩を出るための理由が必要となりました。許可されれば藩庁や菩提寺などから通行手形をもらうことができ、関所を越えることができたのです。人の移動が厳格に制限されていた時代でしたので旅に出るのは容易ではないですね。

 

それでも参拝目的や湯治のためなら通行手形がもらえましたので、「伊勢神宮、日光東照宮、長野善光寺などに行きたい」「箱根や草津の湯で湯治がしたい」と書いて手形をもらっていたのでしょう。通行手形は旅行をしている最中は必ず持っていなければならず、何か言われたら手形を見せました。つまり身分証明書やパスポート的な役割を果たしていたんですね。

 

湯治などは温泉地に1週間以上滞在していましたので、その時間は遠方の人と交流できた数少ない機会となりました。「私の藩ではこんなことがあった」「うちの藩は殿様が変わって年貢が厳しくなった」など情報交換ができたのです。生き帰りの道中では、歩き疲れたら茶屋で休憩し、暗くなったら移動はやめて、泊まります。

 

現代とは違い、江戸時代の人たちにとっての旅は生きているうちに数回できるかどうかのようなものでした。それも荷物を背負い、荒れた道を歩き続けるという過酷な旅を強いられます。そう考えると、私たちはとても恵まれた旅をしていると感じることができますね。

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