もし、自分1人が海に漂流していたら、この近くに陸はあるのだろうかと探すことでしょう。陸が見えると希望の光が差し込むに違いありません。しかし、今から紹介する場所は希望をことごとく打ち砕いてしまう場所でもあります。なぜなら世界の中で一番陸地から離れている場所だからです。その名も「ポイント・ネモ」と言います。
このポイント・ネモは到達不能極の一つに挙げられています。到達不能極とは、陸上で最も海から遠い点、または海上で最も陸から遠い点の事です。ポイント・ネモは後者に当たります。
ポイント・ネモがどこにあるかというと、ニュージーランドとチリの真ん中あたりにある場所です。座標で言えば、南緯48度52分5秒 西経123度23分6秒で、南太平洋上になります。ポイント・ネモは島ではなく海ですのでここには何もありません。
一番近い陸地でも約2,700km離れていますので、ここに漂流していたとしても助けがすぐに来ないことは分かるでしょう。陸地から2,700kmということでポイント・ネモに到達するのに船で約15日間かかります。ちなみに宇宙にある宇宙ステーションは地球からの距離が約400kmですので、陸地より宇宙ステーションの方がポイント・ネモに近いということになります。
ポイント・ネモは2つの特色があります。1つは生物があまりいないということです。それはなぜでしょうか。外からの栄養豊かな海水がポイント・ネモに行くまでに、南太平洋還流によって妨げられてしまうためです。さらに、陸地から離れているので有機物が風で運ばれてこないという理由もあります。つまりポイント・ネモにはプランクトンが少ないので、それを食べる小魚や他の水中生物が少なく、それらを食べる魚も少ないというわけです。
特色の2つ目は、人工衛星の墓場として使われているということです。周りには何もないですし、あまり生物もいないとことでポイント・ネモが選ばれています。使えなくなった人工衛星やいらなくなった人工衛星をここ目がけて落としています。そのため今までで約300機に及ぶ人工衛星の破片が水没しているとみられています。
人工衛星だけでなく、宇宙ステーションも沈んでいます。ロシアの「ミール」、中国の「天宮1号」の2つです。2031年には国際宇宙ステーション（ISS）もここに落下させる予定となっています。
ポイント・ネモには生物はほとんどいない＆金属片がたくさん落とされているゆえに、地球上の海でもっとも死んでいる場所とも言われているのです。
