皆さんは銭湯に行ったことはありますか。主流となっているのはスーパー銭湯などの大型施設ですが、個人で経営している銭湯もちらほら見つけることができます。そして銭湯といえば、多くの人が思い浮かべるのが富士山の背景画です。浴槽の上に雄大な富士山が鎮座しています。しかし、時代の移り変わりと共に、実際に富士山の背景画を見たことがある人は減ってきているかもしれません。でも、なぜ銭湯には富士山の絵が描かれているのでしょうか。
この富士山の絵を最初に描いたのは、画家の川越広四郎(かわごえ こうしろう)です。依頼主は、1971年まで東京都千代田区で営業していた「キカイ湯」の主人・東雄三郎(あずま ゆうざぶろう)です。実は、東さんは最初から富士山を描いてほしいと頼んだわけではありませんでした。どういうことでしょうか。
東さんは、悩みを持っていました。それは、お風呂場で子供たちが騒ぎ回り、それによって他のお客が迷惑していたのです。そこで東さんは「楽しい絵があれば子どもたちもおとなしく湯に入ってくれるだろう」と考えました。そこで、子ども連れのお客さんが多かった女湯に、自動車と汽車の絵を注文しました。子供たちは喜びそうですね。
しかし、男湯にはどんな絵を描くべきか思いつきませんでした。そこで、川越広四郎さんに相談したところ、男湯には立派な富士山の絵を描くことになったのです。この富士山の絵は大評判となり、遠方からも多くのお客さんがキカイ湯に訪れるようになりました。
この成功を見た他の銭湯も、キカイ湯をまねて同じように富士山の絵を描くようになりました。その結果、銭湯といえば富士山の背景画が当たり前となっていったのです。このようにして、銭湯と富士山の背景画は一つの文化となり、多くの人々に愛される風景として長年愛されるようになったのです。
しかし、現在において富士山が描かれた銭湯を探す方が大変かもしれません。先頭の数が減り続けているからです。今では富士山だけでなく、東京スカイツリーや宇宙空間などが描かれた銭湯もありますし、ペンキ絵ではなく、プロジェクションマッピングで映し出すものもあります。時代の変化を感じますね。
やはり富士山の背景画が描かれた銭湯は、日本の風情を感じる素敵な場所です。みなさんも、銭湯でリラックスしながら、富士山の美しい絵を楽しんでみてはいかがでしょうか。