日本で一番有名かつ信仰の対象にもなっている富士山。2013年には世界文化遺産にも選ばれ、外国人も多く訪れる山となりました。そんな富士山ですが、頂上は静岡県のものなのでしょうか。それとも山梨県のものなのでしょうか。
静岡県側のJRの駅には富士駅、新富士駅、富士宮駅と富士山にまつわる駅がたくさんあります。対して山梨県側にも富士急行の駅に富士山駅があります。どちらの県も富士山を推しています。加えて登山道も静岡県側と山梨県側どちらにもあります。やはり富士山は「うちの県のもの」という意識は少なからずあるようです。
では頂上はどっちの県のものなのだろうか。実は、富士山山頂と東斜面5kmほどは県境未確定地となっています。つまり、どっちの県のものでもないのです。どうしてどちらかの県のものではないのでしょうか。
事の発端は徳川家康にあります。関ケ原合戦の勝利を記念して、富士山をご神体とする浅間大社の本殿を造営します。そして8合目以上を神社が所有する土地と定めてしまいました。その後、明治時代に入ると8合目以上は国有地として国に没収されますが、以前として8合目以上を浅間大社に無償で貸与しています。
しかし太平洋戦争が終了し、新憲法で政教分離が定められると寺社に対する土地の無償貸与が禁止されてしまいました。浅間大社はこれに反発し、「富士山があって初めて宗教活動ができるのだから山頂の土地をうちに譲ってくれないか?」と大蔵省に言います。そこに待ったをかけたのが山梨県でした。「富士山を私有地化するなど言語道断!」と言ったかどうかわかりませんが富士山私有地化反対運動が勃発します。
結局17年間裁判が行われ、登山道や気象庁の観測所を除く8号目以上の土地は浅間大社のものという判決が出たのです。そして2004年に土地の無償譲渡の通知書が交付され、正式に浅間大社に返還されたのです。ちなみに8合目以上は浅間大社の所有地ではなく境内ということになっています。山頂とその周辺には住所もありません。
静岡県側も山梨県側もできるなら山頂は自分の県にしたいと思っているでしょうが、歴史的背景から線引きするのが難しいようです。世界文化遺産の登録にあたって静岡県と山梨県は力を合わせてゴミ問題を解決しています。どちらのものでもありませんが、富士山を愛する点では同じということですね。