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アフリカってひとつじゃないのに、なぜ「アフリカ」とひとくくりにされるのか?――見えない思い込みの正体

 

モロッコ シャウエンの街並み

「アフリカ」と聞いたとき、あなたはどんなイメージを思い浮かべますか?
サバンナ、動物、貧困、民族衣装、砂漠――もしかすると、そんな言葉が頭に浮かぶかもしれません。
でも実は、その「アフリカ」という一言の中には、54もの国と、10億人を超える人々の多様な文化・歴史・言語・経済が詰まっています。

それなのに、なぜ私たちは「アフリカ」という大陸全体を、ひとつの国やひとつの文化のように感じてしまうのでしょうか。
今回は、その理由と背景、そしてそこに潜む問題について掘り下げていきます。


1. アフリカはどれほど広く、どれほど多様なのか

まず、アフリカがどれほど大きいかを想像してみましょう。
地図で見るとヨーロッパと同じくらいに見えるかもしれませんが、実際の面積はまったく違います。
アフリカ大陸には、アメリカ合衆国、中国、インド、日本、そしてヨーロッパのほとんどの国々を合わせてもまだ余裕があるほどの広さがあります。

言語も文化も驚くほど多様です。アフリカでは2000以上の言語が話されています。
北のエジプトではアラビア語が主流ですが、西のナイジェリアでは英語が公用語でありながら、実際にはヨルバ語やハウサ語など数百もの言語が共存しています。
東のケニアやタンザニアではスワヒリ語が広く使われ、南アフリカには11もの公用語があります。

つまり、「アフリカの文化」とひとことで言うのは、「アジアの文化」と言うのと同じくらいざっくりしているのです。
日本、中国、インド、サウジアラビアを全部まとめて「アジア文化」と呼ぶのが違和感があるように、アフリカにも無数の違いがあるのです。


2. なぜ「アフリカ=ひとつのもの」と見られてしまうのか

こうした多様性があるにもかかわらず、「アフリカ」はひとくくりにされやすい。
その背景には、歴史的な理由があります。

植民地時代の名残

19世紀後半、ヨーロッパの国々は「アフリカ分割」と呼ばれる時代に入りました。
イギリス、フランス、ベルギー、ドイツ、イタリアなどが勝手に国境線を引き、アフリカの土地を奪い合ったのです。
このとき、現地の民族や文化の違いはほとんど無視されました。
結果として、アフリカの国境線は今でも直線的で、不自然なものが多く見られます。

ヨーロッパ人にとって「アフリカ」はひとつの「資源の大陸」であり、「未知の世界」でした。
その視点が、のちのメディアや教育の中で「アフリカ=ひとまとまりの地域」という固定観念を生み出したのです。

メディアによる単純化

ニュースやドキュメンタリーでアフリカが登場する時、多くの場合は「貧困」や「紛争」などの話題です。
「ケニアでのテロ事件」や「コンゴの鉱山労働」など、特定の国の出来事でも、報道の中では「アフリカの問題」とまとめられることがよくあります。
それが繰り返されるうちに、私たちは「アフリカ=貧しい大陸」というイメージを持つようになりました。

実際には、ルワンダのIT産業の急成長や、ナイジェリア映画「ノリウッド」の隆盛、南アフリカの宇宙開発など、ポジティブな話題もたくさんあります。
けれど、それらはあまり大きく報道されません。
多様な現実があるのに、メディアが伝えるのはその一部だけ――それが「ひとくくり化」の大きな原因なのです。


3. 教育と地図の影響

私たちが学校で使う世界地図の多くは、メルカトル図法と呼ばれる形式です。
この地図では、北や南の地域が実際より大きく描かれ、赤道に近いアフリカは小さく見えます。
そのため、無意識のうちに「アフリカは小さくて、発展していない地域」という印象を持ちやすくなってしまうのです。

また、世界史の授業でもアフリカが主役になることは多くありません。
古代エジプトや大航海時代の「奴隷貿易」には触れても、現代のアフリカ諸国の成長や文化については詳しく学ばないまま終わることが多いのです。
知識が少ないと、人はひとまとめに考えがちになります。
「知らない=単純化する」という心理が働いてしまうのです。


4. アフリカを「一括り」にすることの問題

「アフリカは貧しい大陸」と言われると、それは54か国すべてに対しての評価のように聞こえてしまいます。
でも実際には、経済的に急成長している国もたくさんあります。
ナイジェリアやケニア、エチオピア、南アフリカなどは、スタートアップ企業やテクノロジーの分野で世界から注目を集めています。

一括りにされることで、こうした個々の努力や成果が見えにくくなります。
また、支援や投資の面でも「アフリカのために」という漠然とした枠組みがつくられ、地域ごとの事情が無視されがちになります。
本当に必要な支援が届かないこともあるのです。

さらに、文化の面でも誤解が生まれます。
「アフリカの音楽」や「アフリカの服」と言っても、地域によってリズムも色もまったく違います。
西アフリカのドラムと南アフリカのジャズを同じカテゴリーに入れるのは、日本の演歌と韓国のK-POPを同じにするようなものです。


5. どうすれば「ひとくくり」から抜け出せるのか

私たちができることは、まず「知る」ことです。
ニュースを読むとき、「アフリカの国」という言葉の裏にある具体的な国名を意識してみる。
映画や音楽を楽しむとき、その作品がどの地域の文化から生まれたのかを調べてみる。
そんな小さな関心の積み重ねが、「アフリカ=ひとつ」という思い込みを解きほぐしていきます。

また、SNSなどを通じて現地の人々の声に直接触れることも大切です。
今は誰でもスマートフォンひとつで、ナイロビやラゴス、カサブランカの人たちと同じ情報空間を共有できます。
そこにある日常の光景は、きっとあなたが思い描いていた「アフリカ」とはまったく違うでしょう。


6. 最後に

「アフリカ」は、ひとつの大陸であっても、ひとつの国ではありません。
そこに住む人々には、それぞれの言葉、食文化、信仰、音楽、夢があります。

世界を単純に「国」や「地域」で区切ることは、私たちの理解を楽にしてくれます。
でも、その楽さの裏には、見落とされる多様性があります。
アフリカを「ひとくくり」にすることは、そこに生きる人々の物語を一色に塗りつぶしてしまうことなのです。

次に「アフリカ」という言葉を聞いたとき、思い浮かべてみてください。
サバンナだけでなく、大都市の夜景や、音楽フェス、テクノロジー企業、そして日々を生きる普通の人々の姿を。
そのとき初めて、私たちは「アフリカ」という言葉の本当の意味に少しだけ近づけるのかもしれません。

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