今でこそビルなどの建物はコンクリートが使われていますが、昔の建造物は木でできています。法隆寺、清水寺、春日大社、伊勢神宮などなど。コンクリートはなかった時代ですので木材が使われているのですが、あれほどの大きな建物となると木も小さなものでは駄目で、柱や梁は巨木が用いられています。だからこそピンチなのです。どういう事でしょうか。
実は、大径・長大材資源が枯渇しているのです。日本の森はたくさんあります。木が生えすぎて困っているくらいです。しかしそれらの木は戦後植えられたものが多く、樹齢が70年程度です。神社、寺院、宮殿などの巨大建築で使うには小さすぎるのです。大きく太い木は昔に切り倒され、使われてしまいました。なぜなら奈良時代以降に建てられた巨大建造物はヒノキが使われていたからです。
高さ40メートル、直径が1メートル以上の木となると200、300年経過しなければなりません。そのため法隆寺や伊勢神宮の修復や再建となると日本の木を使うことは難しいのです。創建当時と同じものを求めるとなると世界に頼るしかなくなっているのです。
奈良時代には近江の国のヒノキの巨木林が使われ伐採されました。その後も各地の山からヒノキの巨木が伐採され枯渇していきます。江戸時代初期にはヒノキの巨木はなくなったと言われています。次に標的になったのはケヤキです。江戸時代に建てられた建造物はケヤキの大木が多いです。しかしそれも尽きてきます。
次に目を付けたのが台湾です。明治時代以降はタイワンヒノキを輸入して建造していましたが、戦後はそれも難しくなりました。タイワンベニヒノキやラオスヒノキなども輸入していますし、アメリカやアフリカからも輸入しています。国産では賄うことができないのです。
欧米のようにレンガ造りや石造りの建物なら修復や復元は簡単でも、木造文化財を維持管理していくのも容易なことではありません。
日本は地震も多い国ですし、高温多湿という気候でもあります。毎年台風もやって来ますし、火災も無視できません。2019年には火災によって首里城が焼失しているからです。巨木という資源が枯渇している今、木造文化財を維持していくのはとても大変な事なんですね。