貴殿のふとした疑問に答えるブログ

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木で作られた大型船が無いのはなぜ?

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北前船

木で作られた船と聞くと何を思い浮かべますか?北朝鮮から流れ着いた船、1本の巨木をくりぬいてできた丸木舟、北前船、航海時代の船、蒸気船などでしょうか。巨大な木造船のイメージはありません。そして最近では小さめの船は木造に変わってFRP(繊維強化プラスチック)でできた船の方が多くなっています。では、大型の船になるとどうでしょうか。鉄船や鋼船になります。巨大タンカーやクルーズ船が木造船ということはありません。では、なぜ大型の船は木造船ではないのでしょうか。

 

ここ150年くらい前までは、すべて木材を素材とする木造船でした。ところどころ木造船に鉄板を張り付けた船は存在しました。例えば、織田信長が毛利軍と戦う際に使用したのが鉄甲船です。船の外側に鉄板を貼り付けることで焙烙火矢もしくは焙烙玉(火薬を用いた武器)から船を守りました。それでもALL鉄の船ではありませんでした。

 

日本は周りを海で囲まれた海洋国家ですので、造船の技術はあったとは思うのですが、江戸時代には大きい船の建造が禁止されていたこともあり、大型の造船技術が発達していきませんでした。そのため鎖国が解けたあとに外国の技術が入ってくるようになりだしてから日本でも鉄船や鋼船の技術を持てるようになりました。日本で鉄鋼船が建造されたのは明治時代に入ってからになります。

 

大型の木造船が造られていないのには理由があります。一番大きな欠点は重いことです。確かに鉄に比べれば木は軽い素材ですが、鉄のように薄く伸ばしたり出来ません。木を薄くすれば耐久性はなくなります。そういった面では木は加工しにくいので、木造船を建造するとなると大量の木を使う必要がでてきます。そうなると結果、鉄の船よりも木造船の方が重くなってしまうのです。

 

また、木は腐敗や摩耗が激しいので定期的に補修やメンテナンスが必要になります。小さな船ならまだしも、木造の巨大な船だと経費や労力をメンテナンスに多く注がなければならなくなります。コストがかかりますね。

 

その他、鉄のように隙間なく接合するのが難しくなります。隙間があると浸水してしまいますので木造船にはそのようなデメリットもあります。加えて、釘での接合部が緩みやすく構造が弱いのであまりに振動が激しいと壊れてしまう恐れもあります。

 

こういった種々の理由により大型の木造船は建造されていません。それでも木造船は人間が原始的な時代から19世紀までメインで使われ続けています。人間の営みにとって欠くことのできなかった船でもあるのです。

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