日本人の3割が花粉症で悩まされているといわれています。医薬品会社やお医者さんは儲かるかもしれませんが花粉症の人からみれば春先はきつい時期となります。社会的にも経済的にも大きな影響を及ぼしている花粉症ですが、原因となっている杉を伐採しないのはなぜだろうと考えることは無いでしょうか。今回はその点にスポットを当ててみます。
杉はみつばちなどの虫が花粉を運ぶ植物ではなく、風によって花粉が運ばれます。これを風媒花(ふうばいか)といいます。そのため風に乗れば遠くまで花粉が飛んでいくのです。杉が生えていない都心でも花粉症が発症するのは杉が風媒花だからなのです。
なんでこんなにも杉は大量に存在しているのでしょうか。実は、杉の多くは人工的に植えられました。第二次世界大戦のあと日本には物資がかなり不足していました。戦争中は燃料として、また資材として木が伐採されて行きましたのではげ山が広がり、台風が直撃すれば土砂崩れをもたらすなど甚大な災害が頻発しました。
そのため、はげ山に木を植えようキャンペーンが始まります。そこで選ばれたのが杉です。日本の固有樹種で、加工も容易で、幅広い用途に使えるからでした。また杉は深く根を張り、成長が早いという特性も持っています。何にでも使える万能な木材だったため日本各地で植えられるようになったのでした。
しかし、杉が成長すると花粉症で悩む方が増えていきました。まさかこんなに悩ますことになるとは思わなかったのでしょう。では杉を伐採すればいいのでは、と考えてしまいます。しかしそう簡単には伐採出来ないのです。それはなぜでしょうか。
・杉は山に植えられていますが、伐採するには山林の所有者の許可が必要です。その所有者が不明だったり複数人にまたがっている可能性があり、簡単には伐採できません。
・人材も不足しています。伐採するにしても人手が必要ですが、人材の不足に加えて多くが高齢者であるのが現状です。
・杉が植えられていることで土砂崩れを抑えている側面があります。そのため杉を伐採すると災害のリスクが高まってしまいます。
・杉材の商品価値は低く、伐採してもほとんど利益になりません。運搬費や人件費を考えると伐採を生業にしようとは考えないでしょう。
・杉が成長していく過程で二酸化炭素を吸収してくれています。なので温暖化を防いでいるという点で優秀な木なのです。
今回は、杉を伐採できない理由を考えました。ということで今後も花粉対策は続いていきそうです。