スーパーに行くと、牛乳がたくさん売られています。場所によってはヤギ乳、時には羊のミルクまで見つかります。でも、おなじ家畜として飼育されている「豚のミルク」は見たことがないはずです。なぜでしょうか。これにはいくつか理由があり、少し変わったミルクの話をすると、とても面白いかもしれません!
【豚のミルクはどうして手に入らないの?】
まず、豚からミルクを採るのはとても難しいのです。一般的な牛やヤギと違い、豚はミルクを搾られることを嫌がりやすい動物です。搾乳する人が近づくと、豚は怯えたり攻撃的になることがあります。このため、豚からミルクを採ろうとするのは一筋縄ではいかないのです。さらに、豚のミルクは獣のような独特のにおいがあるとされ、牛乳やヤギ乳に比べて飲みやすいものではないと言われています。実際に、味見をした人の話では、香りや風味が強く、あまり口にしたくないと思われることも多いようです。
【反芻動物と豚の違い】
ここで、牛やヤギなどの「反芻(はんすう)動物」と豚の違いもポイントです。反芻動物は、胃がいくつもある構造で、食べ物を何度も「反芻」しながら栄養を効率的に消化吸収します。この仕組みにより、反芻動物のミルクは脂肪分が適度にあり、飲みやすい味わいになることが多いのです。牛乳やヤギ乳がなめらかで、甘みがあり飲みやすいのはこのためです。
一方、豚は反芻をしない「単胃動物」と呼ばれる動物です。そのため、食べ物の消化の仕方が違い、栄養分も異なる形でミルクに影響します。さらに、豚はたくさんの乳首を持ちますが、1つ1つから出る乳の量は少なく、効率的にミルクを集めるのが難しいのです。
【豚のミルクが普及しない理由】
さらに、豚のミルクを搾乳し、加工して流通させるためには、専用の施設や技術が必要です。牛やヤギのミルクに比べて手間がかかるため、わざわざ豚乳を商品化するメリットはあまり感じられません。加えて、豚は一般的に草だけでなく大豆や穀物も食べるため飼育費用が増えコストがかかってしまうのです。つまり、豚のミルクを生産するためだけに飼育するには費用がかかりすぎるという問題があるんです。
このように、豚のミルクが普及しないのは、採乳の難しさ、風味、動物の種類の違いなど、多くの理由が重なっているためです。普段当たり前のように飲んでいる牛乳やヤギ乳も、実は動物ごとの特性や栄養の違いで成り立っていると考えると、ミルク一つ取っても奥が深いものですね。