「天然資源の呪い」という言葉を聞いたことがありますか?一見、豊富な資源がある国は経済的に恵まれているように思えます。しかし、実際には資源があることが逆に国の発展を妨げることがあるのです。これは「天然資源の呪い」と呼ばれ、経済学や政治学でよく議論される現象です。
例えば、アフリカのナイジェリアは世界有数の産油国です。石油輸出による収入は莫大ですが、国内では貧困や失業が深刻な問題となっています。その理由の一つは、「オランダ病」とも呼ばれる経済の偏りです。石油産業が急成長したことで、他の産業が衰退し、経済全体のバランスが崩れてしまいました。その結果、輸出の多様性が失われ、石油価格が下がると国全体が経済的に苦しむことになります。
また、資源が豊富な国では、政治の腐敗が進みやすいとも言われます。政府が資源から得られる収入だけで運営できるため、国民からの税収をあまり必要としなくなります。すると、政府は国民の声に耳を傾ける必要がなくなり、独裁や汚職がはびこりやすくなるのです。例えば、ベネズエラは石油に依存していましたが、政府の経済政策の失敗と汚職により、国全体が経済危機に陥りました。
さらに、資源をめぐる争いも問題になります。コンゴ民主共和国は金やダイヤモンド、コバルトなどの鉱物資源が豊富ですが、それをめぐる武装勢力の争いが絶えません。このように、資源があることでかえって国内の対立が深まり、国の安定が損なわれるのです。
では、天然資源の呪いから抜け出す方法はあるのでしょうか?成功例として挙げられるのがノルウェーです。ノルウェーは石油収入を「政府年金基金」と呼ばれる基金に積み立て、長期的な経済の安定を図っています。また、資源だけに頼らず、ITや漁業などの産業も発展させ、経済の多様化を進めています。その結果、資源の呪いに陥ることなく、安定した経済成長を続けています。
資源が豊富なことは必ずしも悪いことではありません。しかし、それをどう管理し、活用するかによって、国の未来は大きく変わります。資源に依存しすぎず、産業の多様化を進めること、透明性のある政治を実現することが、呪いを防ぐカギとなるのです。