貴殿のふとした疑問に答えるブログ

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ニシンはなんでいなくなったのか?

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北海道には鰊御殿(にしんごてん)なるものが保存されている場所があります。鰊御殿とは、第二次世界大戦より前に北海道の日本海側に建てられた、網元の居宅兼漁業施設(番屋)のことで、ニシン漁で財を成した網元が建てたものです。それほど北海道ではニシンが獲れていました。しかし現在はどうでしょうか。スーパーの魚売り場に行ってもニシンの姿を見ることはほとんどありません。なぜなら、獲りすぎてニシンがいなくなってしまったからです。


明治時代からニシンは北海道の漁業を支えていました。1897年のニシンの水揚げは97万トンにもなり、網元は多くの財を成しました。町にも人々がやってきて活気に満ちていたと言われています。北海道の民謡でもある「ソーラン節」はニシン漁の歌として有名です。それほど北海道ではニシン漁が盛んでした。春になるとニシンが産卵のために大群となって沿岸に押し寄せ、卵に一斉に放精したため海が白く染まるほどだったという逸話もあります。


しかし乱獲の影響で、ニシンは激減してしまいます。2017年の北海道でのニシンの漁獲量は1733トンにまで減ってしまいました(留萌水産物加工協同組合の調査)。そりゃ私たちの口に入ることも無くなりますよね。

 

ニシンのほとんどは輸入に頼らざるを得なくなりました。ということは当然ニシンの卵である「数の子」も輸入になってしまうのです。数の子を食べる習慣があるのは日本だけです。現在はカナダ、アラスカ、イギリス、ロシアなどから数の子を輸入していますが、これらの国々は、日本に輸出する前までは数の子を全て廃棄していましたので、北海道でニシンが獲れなくなって一番恩恵を受けているのは彼らかもしれません。


ニシンは漁獲管理をせず乱獲したせいで半世紀前にはほとんど獲れなくなってしまいましたが、現代においても乱獲ゆえに海産資源が少なくなっているニュースを見聞きします。クロマグロやチョウザメなどです。

 

従来は輸送や保存の技術が無かったゆえに地産地消していたところを、現代では冷凍技術や加工技術も高く、獲るための道具や方法も開発されているので、短期間のうちに大量に獲れるようになりました。そしてそれを食する人も増えました。大量に獲って消費されるのは良いことのように感じますが、長い目で見ればそこに未来はありません。ニシンが物語っています。


かつてアメリカのある地域で金鉱が発見されました。多くの人が金を求め街に殺到し、ゴールドラッシュに沸きましたが、金を掘りつくした後の街は衰退してしまいました。魚という資源も同じですね。

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