皆さんタコは食べるでしょうか。スーパーに行くと鮮魚売り場にタコが置いてあります。パックを見ると、どこ産のタコと記載されていたでしょうか。日本産もありますがモーリタニア産と書かれているものもあります。「モーリタニア…ん、どこ?」と感じる方も多いでしょう。なんでモーリタニア産のタコが多いのでしょうか。
モーリタニアの本来の国名は、モーリタニア・イスラム共和国と言い、アフリカ北西部に位置する国です。日本の約3倍の国土面積を持っていますが、9割は砂漠です。人口は400万人程度です。日本との接点は無さそうですが、実は1人の日本人が懸け橋となって日本の食卓にモーリタニアのタコが並ぶことになったのです。
その人物とは中村正明さんという方で国際協力事業団(現在のJICA)からモーリタニア派遣されたただ一人の日本人でした。モーリタニアで7年間漁業指導を行っていたのです。しかし、モーリタニアは産業としての漁業が発展しておらず、技術、人材、物資などがありませんでした。全部投げ出して帰国してしまいそうな状況ですが、中村さんはモーリタニアの漁業を発展させるべく現地で頑張っていました。
ある時、モーリタニア沖に良好なタコの漁場があることが分かり、指導のメインをタコ漁にしました。たくさんのタコを獲ることができたのですが、モーリタニアではタコを食べなかったので、獲れたタコはそのまま日本に輸出することになりました。ですから、日本のスーパーにモーリタニア産のタコがたくさん並ぶようになったのです。日本が輸入しているタコの3分の1がモーリタニア産となっています。
タコ漁によって地元の漁師たちの収入も増えました。それだけでなく、漁で使うタコ壺を工場で作るなどで現地の雇用も創出しています。タコ漁はモーリタニアの主要な産業にまで成長し、国の収入の約半分をタコ漁が占めています。こういったことからモーリタニアは親日家が多い国となっています。
たった1人の日本人が環境も全然違うアフリカの地に行き、そして漁業(タコ漁)を教えるという難題を行なっていたのが驚きですね。そのおかげで美味しいタコを食べることができるのですから中村さんには感謝ですね。今度タコを買う時にはモーリタニアに思いを馳せてみるのはいかがでしょうか。