多くの人が働くために都心に集まり、そのニーズに応えるかの如く不動産価格が上昇しています。一般的に都心に近い街は地価が高く、自宅として選択できる住宅の面積は小さくなります。最近よく見るCMに「OPEN HOUSE」があります。「東京に、家を持とう」のキャッチフレーズで一躍知名度を上げ、都心の限られた土地に戸建を持ちたい方向けに人気の会社です。多くの人のニーズは交通の便がよく、会社に近い都心部のようです。
しかしコロナの流行によってリモートワークが普及しました。「あれ、会社に行かなくても仕事できるじゃん!」と気付いた方々もいるでしょう。通勤の必要がなくなれば、ゆったりとした面積の家に住める郊外の街を選ぶ人が増えるのが自然な流れです。子どものいる家族などでは、声やテレビの音などが気になるリビングから離れた場所に仕事用のスペースが確保できればなおありがたいと感じるでしょう。
今後、自動運転が普及すれば田舎に移住してもリモートワークで仕事ができるし、買い物も運転しないので楽です。車で寝ている間に職場に連れて行ってくれるので、満員電車に乗らなくてもよくなるので通勤もさほど苦にならなくなります。
このように、自動運転の普及によって田舎に住む敷居が低くなることでしょう。しかし落とし穴もあります。個人の考えとしては良いのですが、自治体としてはやっていけません。どういうことでしょうか?
もし田舎の広範囲に多くの人が住むようになれば、電気や上下水道や道路の敷設や修繕などインフラを整えるだけでかなりの負担を自治体に強いることになってしまいます。またゴミの収集もわざわざ遠くの一件のために来る羽目になります。介護に関しても介護従事者の負担になるでしょう。自治体はやっていられなくなります。
ある程度範囲を決めて「この辺に住んでくださいね」といった自治体がコミットするところに集まって住む、という方向になるのではないでしょうか。そうしないと住民税を高くするしかなくなります。コンパクトシティーを目指すことでしょう。
個人の思惑と、自治体の思惑は必ずしも一致するわけではないということが分かります。自動運転が普及すれば今までの生活様式は少なからず変わっていきます。「東京に、家を持とう」という考えを持つ人も少なくなっているかもしれません。自動運転が普及した時に人々の価値基準がどのように変化しているのか楽しみです。