利用されている方は分かると思いますが、総武本線の線路にはなぜかチョロチョロと水が流れています。実際に見たという人もいるのではないでしょうか。この水が出る現象は東京駅だけでなく新日本橋駅や馬喰町駅でも見られます。あと地下鉄の駅でも水が出ていることありますね。なんで線路に水が流れているのでしょうか。
この原因は地下水です。私たちは地下にある水を見ることはまずありません。しかし、雨が降る場所であれば地下水は大抵存在します。ほとんど雨が降らない砂漠でも地下水があり、それは昔降った雨が源になっています。地下水が豊富に存在するのは、特に砂れき層が発達した沖積平野や扇状地です。東京のある関東平野、名古屋のある濃尾平野や大阪平野など日本を代表する沖積平野には莫大な量の地下水が存在しています。
東京駅はもともと海が近い場所でした。江戸時代から周辺は徐々に埋立地にしていきましたが、現在の有楽町駅、新橋駅、田町駅、品川駅、築地駅などは海だった場所です。埋め立てが始まる前の東京駅は海の目と鼻の先だったんですね。それゆえ地下水の水位は相対的に高く、地下水が増えれば地下にある駅は地下水に埋まってしまうのです。現に地下総武ホームではホームが地下5階なのに対し、地下水は地下3階付近まで達しています。そりゃ水も出てきますわな。
東京では高度成長期の地下水過剰汲み上げによって地盤沈下が起こってしまったため、現在では地下水の汲み上げが禁止されています。それによって地下水の量は増え、地下水上昇によるホームの浮上問題にさらされているのです。
対策としては駅構造物の下18mにある固い岩盤までアンカーボルト130本を打ち込み、固い地層に地下駅全体を繋ぎ止める形で浮上しない対策をおこなっています。
駅に湧き出た地下水はどうするのでしょうか。水をそのまま下水に流すとJR東に下水道料金が発生するため、常時水量が少なく悪臭などを発生させている立会川に水を流して解決させています。JR東は下水道料金がかからず、東京都は立会川の水量確保と悪臭の低減が図られ双方が良い結果になっています。2003年には副次的効果として水量が回復した立会川にボラが遡上したこともありました。
これから利用される方は、ホームの壁や線路脇に流れている水を見たなら自分は地下水の中のトンネル内にいるんだと感じてみてください。ちょっと怖いですね…