人はいつのころからか、日本でもインドでも中国、ヨーロッパでも、つまり洋の東西を問わず、ハーブ(香草)やスパイス(香辛料)を使ってきました。料理を作る時や食べる時にこれらは重宝しています。それだけでなく日本や中国の漢方、欧米のアロマテラピー、インドのアーユルヴェーダなど医学に応用されています。ハーブやスパイスはとても万能ですね。
一方で、地域ごとの異なる歴史や文化が、スパイスやハーブの利用方法に影響を与えてきました。どういうことでしょうか。
ヨーロッパでは、食料の長距離輸送や冬季の食物確保のためにスパイスが使われてきました。それによってハーブやスパイスを用いた食文化が発展しました。インドや東南アジア諸国では、暑さの厳しい気候に対抗するために香りや抗菌作用のある辛味のあるスパイスが活用され、今でも多様な料理に組み込まれています。
日本はどうでしょうか。日本は海に囲まれていて、山も多いため、海の幸と山の幸がとても豊富です。それゆえに新鮮な素材を生かした食文化が育まれてきました。日本は湿潤な気候で食材を手に入れやすかったため、ヨーロッパなどと比較して食料を蓄える必要もさほどありませんでした。そういった理由ゆえに日本のスパイスは、新鮮で淡泊な素材にアクセントを添えるための“薬味”的な使い方が主流となっていったのです。
代表的な和風スパイスには、しょうが、山椒、わさび、にんにくなどがあります。これらのスパイスは、魚介類を引き立て、生臭さを消し、味わいを引き締めるのに活躍しています。
一方で、たで、大葉、ねぎ、よもぎなどは、日本独自のハーブとして経験的な生活の知恵から生まれました。これらの植物は、食文化や日常生活において重要な役割を果たしています。
日本のスパイスに対する先入観は、「スパイスとは辛いもの」というものでしたが、世界的に見れば辛さを伴うスパイスは稀です。ハーブやスパイスすべては香りを持っており、その幅広い使い方を理解することで、新たな料理の楽しみが広がります。そのポテンシャルゆえ、中世や大航海時代には危険を顧みずに香辛料を探し求めていたのですね。