ヨーロッパのアルプス山脈に囲まれた国であるスイス。「アルプスの少女ハイジ」の舞台としても有名ですね。そんなスイスですが、外国人旅行者の中には「スイスでは、自分の後ろに石を投げれば銀行か時計店に当たる」と揶揄されるほど銀行と時計店が多い国です。スイスはヨーロッパの中でも小さな国なのに、なぜ銀行や時計店が多いのでしょうか。
銀行について考えましょう。スイスの地形を見ると、アルプス山脈に囲まれた山岳国で、昔は今のように飛行機で気軽に行くことは難しい場所でした。そのため外部から侵略されづらい土地でもあったのです。この地理的安全性の高さから金や宝石を預かる銀行にとってスイスは魅力的な場所となりました。
またスイスは永世中立国で、長い間戦争を経験していません。政治的に安定した環境は、金融機関にとって非常に重要な要素となっています。それに加えて、金融機関が預金者の秘密を厳守することで国際的な信用を得ていきました。信用性が担保されているので、西側諸国の富裕層だけでなく、独裁国家の要人たちもスイスの金融機関に資産を預けているのです。しかし、違法な脱税や資産隠し、あるいは金融犯罪を目的とする人々や機関にも利用されてしまっているのが実態なのですが…
次に時計店について考えてみましょう。スイスの時計メーカーはたくさんあります。ロレックス、パテック・フィリップ、オーデマ・ピケ、オメガ、フランク・ミュラー、ウブロなど、一度は耳にしたことのあるメーカーではないでしょうか。これほどまでに時計メーカーが有名なのには訳があります。
スイスの気候が関係しています。時計は精密機械ですので高温多湿の環境では質の良いものが作れません。今でこそ世界中でエアコンが完備されているのである程度のものは作ることもできるでしょうが、時計が作られ始めた16世紀はエアコンなんてありません。でもスイスは年間を通して穏やかな気候で、降水量も少なく、加えて部品の洗浄や研磨に必要な綺麗な水が豊富にあるという地理的条件がそろっていました。
時計の製造はアメリカ、ドイツ、イギリスなどでも行われていたのですが、第二次世界大戦が始まると製造するもののメインは軍事物資にどうしても傾いてしまいます。しかしスイスは永世中立国だったので、戦争の影響をほとんど受けずに高性能の腕時計を開発することができました。そのノウハウが今でも受け継がれているのです。