石油埋蔵量が多い国ってどこだと思いますか?中東のイメージがあると思います。確かに中東の国々ではたくさんの石油が採れます。しかし1位は南米にあるベネズエラという国です。意外ですよね。そして2位が中東のサウジアラビアになります。どちらの国も石油に依存しています。では、オイルマネーによって栄えたこれらの国は今も経済的に豊かなのでしょうか。
そうではないようです。なぜならアメリカで「シェールオイル」というものが採れるようになったからです。シェールというのは「頁岩」(けつがん)と呼ばれる岩石のことで、オイルだけではなくガス(シェールガス)も採れます。
このシェール資源を採取するには莫大な費用と技術が必要でしたが、アメリカがそれらの問題をクリアし採取に成功しました。それによって世界のエネルギー事情が大きく変わったので、「シェール革命」と呼ばれました。シェールオイルの登場によって世界の原油価格に影響を与えることになります。
需要と供給の話になりますが、供給量、すなわち物がたくさんあれば必然と値段が下がります。2012年には1バレル100ドル程度でしたが、シェール革命以後は1バレル50ドルくらいまで下落しています。(参照:NY原油価格)。100円で売れていたリンゴが50円になったようなものです。
そうなるとベネズエラやサウジアラビアなどの石油に依存していた国では経済的に大ダメージを受けました。それまでは潤沢なオイルマネーで経済は潤っていましたが、石油を売っても儲からなくなってきた今では、掘れば掘るほど赤字が続くようになってしまいました。
それゆえサウジアラビアは観光業に力を入れたり、女性の社会進出を認めたり、新たな再生エネルギーを模索するなど石油依存を止めようと努力しています。海外からの技術も積極的に取り入れようとしています。
ベネズエラはというと、石油の埋蔵量は世界一でもオイルの質が悪く(粘度が高い)、精製するのにかなりの費用がかかってしまいます。掘っても赤字、その赤字を補填するためにジャンジャンお金を刷っていたらハイパーインフレーション(物価が超高騰)になってしまいました。最近IMF(国際通貨基金)はベネズエラのインフレ率を、100万%を下回る水準に引き下げましたが、インフレ率が100万%ということは、10円のうまい棒が1000万円になるようなものです。これじゃ国民は生活できませんね。
それによりベネズエラ国内の治安が悪化しましたし、海外からの投資も大幅に減少しました。またベネズエラの人口の10分の1の300万人が国外に避難してしまいました。もう国として機能していません。独裁国家というのも問題を大きくしてしまいました。
このように石油に依存しすぎると、何かの問題が現れた時に経済がつまずいてしまうということです。