皆さんご存知の通り、日本で一番標高が高いところと言ったら富士山で、標高は3,776mです。山梨県と静岡県にまたがっている山で、あまりの大きさゆえ、気象条件が良ければ福島県からでも見えるほど大きい山です。では「日本で一番標高が低い場所はどこ?」と聞かれると答えに窮してしまうかもしれません。どこでしょうか。
それは青森県にあります。青森県八戸市にある八戸鉱山です。「ん、八戸鉱山?何それ」と思われた方もいるに違いありません。八戸鉱山は露天掘りの鉱山になります。露天掘りとは、鉱石を採掘する手法の一つで、坑道を掘らずに地表から渦を巻くように地下めがけて掘っていく手法になります。すり鉢状になっている鉱山をイメージしていただくとよいです。
では、どのくらいの標高なのでしょうか。海抜約-170mです。かなり掘っていますよね。地元ではアメリカのグランドキャニオン似ならって「八戸キャニオン」と呼ばれています。現在も操業しているため露天掘りの中に入ることは難しいですが、展望台が設置されていますので、そこでは鉱山を自由に覗くことができます。
では、八戸鉱山では何を掘っているのでしょうか。それは「石灰石」です。石灰石というのは、海の生物であるサンゴ・ウミユリ・フズリナなどの遺骸が堆積し沈殿したものが岩石となって生成されたものです。八戸鉱山では今から約2億年前に石灰石に生成されたものを掘っているようです。
日本では石灰石がよく採れます。石灰は日本で唯一100%自給できる鉱物資源となっています。セメントの主原料、コンクリートの骨材、飼料、肥料、紙製品、ガラスなど石灰は多岐にわたって用いられています。
八戸鉱山から獲った石灰石はどうやって運ばれると思いますか。鉱山から八戸港まで比較的近いので、総延長が10kmにも及ぶ地下輸送管を八戸港埠頭まで通しています。八戸鉱山から採掘された石灰石をベルトコンベアで八戸港まで輸送しているのです。効率的ですね。八戸鉱山はまだまだ掘られています。下に掘っていきたいのですが、先が細くなってしまいましたので、こんどは横側に掘り進めるようです。
今回はあまり知られていない日本で一番標高が低い場所について考えました。でも八戸鉱山は人工的に標高を低くしていますので、公に認められている最低標高地点は秋田県の八郎潟で海抜-3.9mになります。