大手の牛丼屋といえば、すき家・吉野家・松屋などが挙げられます。それぞれ味は違うとはいえ安くて美味しいですよね。牛肉とタマネギを醤油で甘辛く煮込んだもので比較的シンプルな食べ物ですが人気の食べ物です。日本には約5000店もの牛丼チェーン店がありますが、個人で牛丼屋を営んでいるのはまず見かけません。なぜでしょうか。
牛丼で使われている部位はどこでしょうか。「バラ肉」です。牛の脇腹に位置している部位で、脂は多いですが同時に甘みと旨味が多く、牛肉にしては比較的柔らかい部分です。英語では「ショートプレート」と呼ばれています。チェーン店ではこの部位を輸入しているわけですが、海外ではあまり好まれません。なぜならアメリカ人などは赤身の肉を好む傾向があり、脂が多く柔らかいバラ肉は敬遠されがちなのです。
バラ肉が非常に安く購入できることに目を付けたのが吉野家です。アメリカからバラ肉をたくさん輸入し、薄くスライスして醤油で甘く煮込んだ牛丼を提供し、1968年にチェーン展開を始めます。そして全国展開していくことで、牛丼=吉野家というイメージが付きました。その安さからデフレの象徴とも言われています。
今ではすき家が店舗数トップになっていて、近年は大手チェーン店による牛丼競争が起こっています。新たに参入しては淘汰され、だいたい大手3社の店舗が日本中に散らばっています。
牛丼の並における各社の値段設定はどうでしょうか。
すき家→牛丼(並)が400円
吉野家→牛丼(並)が448円
松屋→牛めし(並)が400円
吉野家は少し高めですが、あとの2社は400円となっており、ワンコインでお釣りがくることを考えればやはり安い値段設定ですね。もしこれを家で作るとなるとどうでしょうか。バラ肉とタマネギだけでなく米や紅ショウガ、調味料も必要です。もしかしたら400円以内で作れるかもしれませんが、そこに光熱費や人件費や地代は入っていません。そう考えるとチェーン店で食べる牛丼がいかに安いかが分かります。
チェーン店は大量に仕入れて、セントラルキッチン(メニューの製造や加工を1ヶ所に集中させる拠点)で作るため、驚くほど安く提供できます。対して個人の牛丼屋となると400円台で提供することはほぼ無理でしょう。倍近くの値段になるのではないでしょうか。お客さんは牛丼=安いものという認識ですので、わざわざ高い牛丼には手を出しません。ですから個人の牛丼屋は増えていかないのです。