かつては「名古屋にうまいものなし」と言われてきた名古屋。しかしここ20年あまりで名古屋めしの認知度が上がり、B級グルメとして定着しているものが多くあります。例えば、味噌カツ、天むす、ひつまぶし、小倉トースト、手羽先唐揚げなどは「名古屋めし」の代表的なもので、他県の人からも認知されてきました。しかし、名古屋めしに関して、複雑な思いで見ている県があります。それは三重県です。
天むすはもともと三重県津市にある天ぷら屋が従業員のまかない飯として出したのが始まりと言われています。その後、のれん分けされた店が名古屋市に出店し、店で天むすを出しました。県を越えて出店することはあり得る話ですが、後日談があります。最初は売れなかった天むすですが、テレビで報道されたことをきっかけに売れるようになり、それを見た笑福亭鶴瓶が名古屋を訪れるたびに大量に買っていったことから、天むす=名古屋のイメージが定着してしまったのです。
また、味噌カツも三重県津市の洋食屋が発祥と言われている説と、岐阜県美濃地方で誕生したという説があります。このように三重県発祥の料理が、いつの間にか名古屋発祥のように言われているのですから、口に出しては言わないまでも複雑な心境でしょう。
実は名古屋発祥ではない名古屋めしは他にも存在します。味噌煮込みうどん(愛知県一宮市)、きしめん(愛知県刈谷市)、エビフライ(東京都)、どて煮(大阪府)などです。しかし名古屋はこれらも名古屋市の名物として取り入れてしまったのです。
では、名古屋めしの定義は何でしょうか。「なごやめし普及促進協議会」によると、「みそかつ、手羽先、ひつまぶしなど名古屋及び近郊で広く受け入れられ、愛されてきた地域独特のメニューで、家庭や飲食店で広く食されているものです。」と書かれています。つまり、名古屋めしすべてが名古屋発祥ではなく、他の地域発祥であっても名古屋で長年愛されてきた料理であれば名古屋めしになるのです。
三重県を含め、他の地域からしたら納得いかない部分もあるでしょう。しかし、各地の無名なB級グルメを全国区にまで押し上げた部分でいえば、名古屋市の功績と言えるのではないでしょうか。