東京都港区は9月1日、来年度の港区立の中学校3年生の全生徒(約760人)の修学旅行先をシンガポールにすると発表しました。生徒1人当たりの旅費は約50万で、そのうち各家庭の負担は約7万円とのことです。ですから43万円程度を港区が負担することになります。この報道を聞いて、「なんでそんなに区が負担しとんねん!」という意見が出ています。そもそも3泊5日で50万は高すぎるとは思いますが、なぜ港区はこんなことができるのでしょうか。
港区と聞いてどこをイメージしますか。東京に住んでいないと馴染みが無いと思いますが、お台場、青山、麻布、六本木、虎ノ門、芝、高輪、赤坂などがある場所です。東京に住んでいなくても一度は聞いたことのある地名ではないでしょうか。お金持ちが住んでいる地域です。
そして港区の特徴の一つに大使館の多さが挙げられます。日本には約150ヵ国の大使館がありますが、その半数以上が港区にあります。なぜそんなにあるのかと言うと、江戸時代には大名屋敷が今の港区にたくさん建っていました。そして明治維新後、日本政府は旧大名家から没収した大名屋敷の跡地を大使館用地として提供していったのです。そのため外国人もたくさん住んでいて、港区の人口の7%が外国人という構成になっています。
加えて、社長が最も多く住んでいる街でも港区は突出しています。2021年の東京商工リサーチによると、社長の居住地のランキングでは、1位港区赤坂、2位新宿区西新宿、3位港区六本木、4位港区青山、5位渋谷区代々木、6位港区高輪、7位新宿区新宿、8位港区芝浦、9位港区南麻布、10位港区三田、となっています。10位以内に7つも港区がランクインしているのです。そして人口に対する社長の比率も13.85%と自治体の中では断トツの数字です。
東京23区の平均年収を比較した数字でも、1000万を超えているのは港区だけです。ですからお金持ちが多いのは納得ではないでしょうか。そのため区民税も一人当たり31万円も払っているのです。全国平均が6万円なのを考えると、とてつもなく高い額を納めているのです。
税金と言うのは所得の再分配という役割があります。つまりお金持ちから徴収した税金を、一般市民に傾斜させて、ある程度標準化させる目的を持っています。なので港区民は国や区にたくさんの税金を納めているのに、さほど恩恵を感じられていないのです。そのため、港区民にしてみれば、せめて子供たちだけでも旅費を区が負担することで、税金を還元させてあげたいという思いがでるのも頷けますね。
シンガポールに行くと決まったのであれば、子供たちにはたくさんのものを吸収してもらいたいと思います。