私たちの周りにはあらゆる差別が存在します。例えば人種差別や性差別などは分かりやすいですね。しかし今回取り上げる統計的差別とはどういったものなのでしょうか。
「統計的差別」とは、侮蔑的な意図からではなく、過去の統計データに基づいた合理的判断から結果的に生じる差別のことです。労働者個々の能力を正確に把握できなくても、企業は過去の統計に基づき、労働者の業績と性別・年齢・学歴などの属性との関係について平均的な傾向がつかめるので、属性間で業績に明らかな違いがあれば、より業績のいい属性を持つ労働者を厚遇しようとします。このように経済合理性を求めて行動すると、結果として差別が生じる状況を「統計的差別」と呼びます。
Weblio辞書から引用
なんとなく分かるでしょうか。企業の例を挙げてみましょう。企業は長く勤めてくれる有能な人材を欲します。となると、人事の採用担当者は過去の統計やデータを踏まえて、女性ではなく男性を多く採用するかもしれません。なぜなら女性は結婚や産休などの理由で、途中で退社してしまうかもしれず、また新たな人材を探さなければならないと感じるからです。
しかし、実際には女性の方が男性よりも長く働くかもしれませんし、有能な人材が多いかもしれません。しかし採用担当者は過去の統計やデータから男性の方が採用した方がいいだろうと考えてしまうのです。
出身大学に関しても統計的差別は生じます。地方大学の学生と東大の学生ならどちらを採用するでしょうか。ほとんどの場合、東大の学生を採用することでしょう。採用担当者は統計的にみて東大の学生の方が良い人材である可能性が高いと思っているからです。
しかし実際に蓋を開けてみたら地方大学の学生の方が東大の学生よりも有能でコミュニケーション能力があるかもしれません。でも採用担当者は過去の統計やデータを信じて東大の学生を採用します。
他にも、外国人には部屋を貸さない、と決めているアパート経営者がいるかも知れません。外国人はみんな部屋を汚したり、壊したり、ごみを分別しない、と考えているからです。まあ文化が違うので日本人に比べてその割合は高いかもしれませんね。
しかしすべての外国人が部屋を汚したり壊したりするわけはありません。日本人にも部屋を汚す人はいます。でも経営者は統計やデータをもとに判断して外国人には貸さないと決めます。
同じような点では、孤独死があるからといった理由で高齢者には貸さないと決めている経営者もいるでしょう。
多くの人はあからさまな差別を嫌いますが、過去の統計やデータに基づいた判断によって差別をしているのかもしれません。
人間というのは過去の統計データを信じる傾向があります。台風の進路、株価、スポーツなど色々な分野で過去のデータが用いられています。自分や自分が所属する組織が少しでも有利でありたいと願うゆえ、過去の統計やデータを活用します。ですから「統計的差別」が無くなることはないでしょう。「差別」って難しい問題ですね…。