日本にダムはどのくらいあるか知っていますか。なんと約3,000箇所のダムが建設されています。実際の数字が分からないのは2つの組織が出している数字が違うからです。一般財団法人日本ダム協会は2,892箇所、一般社団法人日本大ダム会議は3,045箇所と異なっているのです。なので約3,000箇所という数字になりました。
日本で一番有名なダムは富山県にある黒部ダムでしょう。映画にもなっていますし、観光地としても有名なので実際に訪れた方も多いのではないでしょうか。次に有名なのは八ッ場ダム(やんばダム)かもしれません。このダムはマスコミでたびたび取り上げられるので耳にする機会も多いダムではないでしょうか。でも、「どこにあるの?なんで騒いでるの?」と思われた方もいるでしょう。
八ッ場ダムは群馬県の西側(長野県側)にあります。草津温泉の近くと言えばイメージしやすいでしょう。なんで八ッ場ダムはこんなにマスコミに騒がれているのでしょうか。それは、ダムを建設するとダム底に街が水没してしまうからです。それゆえ住民や政治家の反対運動が大きかったがゆえに注目されました。
なぜダムを建設する必要があったのでしょうか。1947年にカスリーン台風が関東を直撃しました。利根川の上流でたくさんの雨が降ったため、下流域で堤防が壊れた結果、洪水が発生し1,100人以上が亡くなりました。そのためダムをもっと造って水の流れる量を調整しよう、という計画がでました。その一つに八ッ場ダムがありました。
しかし、ダム建設予定地の長野原町と吾妻町(現在の東吾妻町)の住民は猛反対。街と吾妻渓谷がダム底に沈んでしまうからです。一方、東京では渇水がひどく、水が欲しい時に川に水がないという状況でした。それゆえ「東京サバク」などと揶揄されています。どうしても水供給の安定化は必要な状況でした。
このようにダムを建設して東京を守るか、それともダムを建設しないで地元を守るかで多くの議論が行われました。それが半世紀以上に渡り行われようやく2020年にダムが完成しました。ダム建設の計画から70年経っています。
八ッ場ダムがあることのメリットは4つ挙げられます。
①水力発電
最大出力11,700kWの電気を作ることができます。
②流水の正常な機能維持
吾妻川の水量を一定数に保つことで、渇水時でも吾妻渓谷の景観を保全することができます。
③洪水調整(治水)
大雨が降った際、ダムの上流で水をせき止めて下流にたくさんの水が流れないように調整しています。
④水の供給
首都圏の水源である利根川は、水道水、農業用水、工業用水などあらゆる場所で使われています。ダムを造ることで水供給の安定化に寄与します。
いろいろな問題を乗り越えた八ッ場ダム。3,000あるダムのうちの1つに過ぎませんが、関東地方の生活を支えているダムでもあります。ダム建設のために多大な犠牲を払って下さった地元の人にも感謝ですね。