ニューオーリンズはアメリカのルイジアナ州南部に位置している港湾都市です。ジャズやマルディグラ（カーニバル）で有名ですので耳にしたこともある方もいるでしょう。実はその市域の約半分が海抜0メートル以下にあります。なぜこんなに低い場所に大都市があるのでしょうか。
ニューオーリンズはメキシコ湾から約100マイル（160km）ほどさかのぼったミシシッピ川の堆積上に位置している都市です。ミシシッピ川は長い歴史の中で、河口付近で度々流路を変えながら、大量の土砂を運んできました。その結果、河口から離れた陸地が沈下し、海面下にありながら海水が入り込まない地域ができたと考えられています。つまり、ニューオーリンズは自然に作られた窪地にあるというわけです。この都市は別名“スープ皿”と言われています。
しかし、ミシシッピ川だけが盆地になった原因ではありません。人間の活動もニューオーリンズの海抜低下に影響を与えています。その一つが地下水の過剰な汲み上げです。ニューオーリンズでは、市民や工業用水道を地下水に頼っていますが、これによって地盤沈下が進行しています。もう一つが堤防や防潮壁の建設です。ニューオーリンズはハリケーンや高潮などの水害に対策するために、市を取り囲むように堤防や防潮壁を整備していますが、これによってミシシッピ川からの土砂の供給が遮断されています。つまり、ニューオーリンズは人間に作られた盆地に建っているというわけです。
2005年にハリケーン・カトリーナが同市付近に上陸したときには、市を取り囲んでいた堤防が決壊し、洪水によって壊滅的な被害を受けました。このハリケーンによって陸上面積の8割が水没してしまったのです。地球温暖化が進んでいるため、このような災害は今後も起こり得る可能性が高く、海抜の低いニューオーリンズの将来は不安定と言えます。
ニューオーリンズは海抜が低いという事実を知っておくことは重要です。この街はアメリカの歴史や文化において重要な役割を果たしてきましたし、今でも多くの人々に愛されています。ジャズ好きの人にはたまらない街です。しかし、その魅力を守るためには、自然や人間の影響に対応する必要があります。ニューオーリンズは海抜ゼロメートル地帯という特殊な環境にありますので、温暖化の影響で水面が上がればこの都市が水没する可能性があるのです。今回は、ニューオーリンズはなぜ海抜が低いのかという話題でした。
