奈良県のイメージを聞くと、仏教、大仏、鹿、奈良漬、せんとくん、といった答えが返ってきます。なんとも地味なイメージを持たれています。隣りには大阪と京都が立ちはだかっていますので引けを取ってしまうのは仕方ありません。しかし世界遺産もたくさんあるはずの奈良県なのに人がいないのでしょうか。
それは地形が関係しています。奈良県で一番人口がいるところは奈良市になります。この奈良市は奈良盆地の最北に位置しています。JR奈良駅と近鉄奈良駅がやはり中心(両駅は少し離れています)となりますが、広域で見ると近鉄の大和西大寺駅も含まれます。商業地はこの3駅に分散されています。そのため大きな商業施設はありません。飲食店はというと近鉄奈良駅と大和西大寺駅の間にある新大宮駅に集中しています。
こじんまりとした商業地と飲食エリアが分散されてしまうと観光客は利用しずらいでしょう。しかしなぜそのような立地にしたのでしょうか。それは、奈良の中心部に平城京の跡地があるからです。そこは史跡保存されているため建物を建てることができないのです。道路や宿泊施設も平城京跡を迂回しているため、街は分断せざるを得なかったのです。つまり、奈良市を発展させたくてもできなかったということです。
それは関西における宿泊施設の客室数を見ても明らかです。2020年度の統計ですが、大阪府117,489室、兵庫県48,228室、京都府47,134室、和歌山県16,827室、滋賀県15,143室、そして奈良県は9,948室で断トツに客室数が少ないです。数年前までは全国最下位でもありました。つまり、奈良県にはホテル&旅館が少ないのです。なので泊まりたくても満室ということもあります。
そして、大阪と京都にとても近いという立地も関係しています。奈良からは電車で40,50分もあれば着いてしまうため、大阪と京都に宿泊客が流れてしまっています。奈良は日帰り客が多い観光地だったのです。宿泊客がいないと地元にお金が落ちないので、奈良県としては泊っていってほしいと願っていることでしょう。しかし皮肉なことに平城京跡がそれを阻害しているのです。
しかしそれが奈良の良さではないでしょうか。世界遺産がたくさんあるにもかかわらず人が少ない珍しい場所です。自然と文化財が調和している都市とも言えます。街中を鹿がウロウロ歩いているのも奈良ぐらいではないでしょうか。ちなみに、鹿は奈良公園だけにいると思っている人が多いかもしれませんが、奈良市一円で見かけます。奈良公園のほかに春日大社の境内、周辺の山、そして市街地にも現れます。学校の校庭にも出没します。奈良は他の都市では見られないものを見せてくれる穴場のスポットなのです。