写真:wikipediaから参照
2019年9月23日、創業から178年目にイギリスの旅行代理店「トーマス・クック・グループ」がロンドンの裁判所に破産を申請しました。この会社は近代的な意味での世界最初の旅行代理店とも言われています。
19世紀において「トーマス・クック」が現れるまでは、旅行者は各自で切符などの手配などを行わなければなりませんでした。インターネットの無い時代ですので自分で手配するのは大変な作業だったに違いありません。そこでトーマス・クックは旅行客のためにホテルや交通機関の予約代行や団体列車の運行を行ない始めました。まさに近代ツーリズムの象徴でした。
トーマス・クックは旅行業だけではなく、ホテル業や航空業も営んでいました。イギリスに行けばトーマス・クック航空が飛んでいるのです。グループ全体の従業員は22000人もいます。このように大規模な会社ですので破産したら影響も多方面にまで及びます。
トーマス・クックを通じた全ての予約は、フライトも海外旅行も含めて全てがキャンセルになり、同社のツアーを利用している15万人以上の渡航者をイギリスに帰国させるために、帰還作戦「マッターホルン作戦」なるものが行なわれています。政府と英民間航空局がチャーター機をたくさん飛ばして、出国者をイギリスに帰国させるという作戦です。
ではなぜ伝統ある大手旅行代理店は業績が悪化し破産に至ったのでしょうか。
イギリス人に人気の海外旅行先で政情不安が続いたり、ヨーロッパ諸国の熱波が続いたこと、ブレグジット(イギリスのEU離脱)に伴う不透明感から海外旅行を控える傾向が続いたようです。また、オンラインの旅行代理店や格安航空会社などの台頭も業績を悪化させた原因に挙げています。
皆さんは旅行を計画する場合に実際に店舗に行かれるでしょうか?たぶん多くの方はネットで予約するのではないでしょうか。このように実際の店舗を持たずネット販売だけで運営する旅行業者をオンライン旅行会社と言います。日本では「じゃらんnet」「楽天トラベル」「Yahoo!トラベル」などが有名ですね。海外では「ブッキングドットコム」や「エクスペディア」などです。このような安さと利便性を売りにした企業が現れることで従来型の旅行代理店は苦境に陥っているのです。
この流れは旅行業だけでなく、百貨店でも見られています。インターネットショッピングの台頭により既存の百貨店は店舗数を減らしています。取扱商品も多く、自宅まで届けてくれる「Amazon」などには敵いませんよね。
老舗や伝統や知名度がいくらあっても、時代の流れを読み間違えるといとも簡単に破産してしまう、というのが今日の教訓でした。