本州の気候は夏が暑く、冬が寒いのが特徴で、季節風の影響もあり四季がはっきりしています。しかし、日本は縦に長い国なので場所によって気候が違うのも当然です。今回は気候区分のひとつである「瀬戸内海式気候」についてお話ししたいと思います。
瀬戸内海式気候とは、名前の通り瀬戸内海に面した地域に見られる気候のことです。瀬戸内海は、本州、四国、九州の間に広がる日本最大の内海で、大小約700の島々が点在しています。この瀬戸内海の影響で、周辺の地域は他の地域に比べて温暖で乾燥した気候になっています。
では、なぜ瀬戸内海周辺の地域は本州のほかの地域とは違う気候なのでしょうか?その理由は、主に二つあります。
一つ目は、海水温の効果です。瀬戸内海は深さが浅く、水がよく混ざるため、冬でも海水温が低くなりにくく、夏でも高くなりにくいという特徴があります。そのため、瀬戸内海に面した地域は、冬は海から暖かい空気が吹き込み、夏は海から涼しい空気が吹き込むという効果を受けます。これにより、年間を通して温度差が小さくなります。例えば、広島市の年平均気温は16.5℃で、東京都よりも1.5℃ほど高くなっています。
二つ目は、山岳の効果です。瀬戸内海に面した地域は、背後に中国山地や四国山地といった高い山々が連なっています。これらの山々は、夏季には太平洋から吹いてくる季節風を四国山地で遮り、冬季には日本海側から吹き込む寒冷で湿った季節風を遮ります。その結果、瀬戸内海側は雪や雨が少なくなります。例えば、岡山市の年間降水量は1,100mm程度で、日本平均の1,700mmよりも600mmほど少なくなっています。岡山市では「晴れの国」をキャッチフレーズにしているほどです。
普通、日本の夏は台風によって雨をもたらしますが、四国山地によって瀬戸内海周辺の地域では降水量が少く、干ばつが発生することがあります。その対策として農地に隣接した土地にはため池が作られることが昔から行われていました。加えて、川にはダムを造ったり、湖を利用するなどして水不足に対応してきた歴史があるのです。
以上のように、瀬戸内海式気候は瀬戸内海と山岳の影響で形成される温暖で乾燥した気候になります。この気候の特徴として、雨が少ないので、稲作より小麦の生産が盛んです。加えて、雨があまり必要でない柑橘類やオリーブなどの作物や花木を生産しています。この部分ではイタリアやスペインなどで見られる地中海性気候に似ていますね。雨の多い日本の中では、この雨の少ない瀬戸内海式気候というのが、他と違う農業をする上で大きな武器になっているようです。