飛行機に乗る際、空港のチェックインカウンターに行って手続きを行います。その時に受託手荷物があればここで預けますが、スーツケースや荷物の重量や大きさが既定を超えていると、追加料金を請求されます。ちょっとドキドキしますよね。よくカウンターの前でスーツケースを開けているのは重量オーバーだったので荷物を減らして軽くしているのでしょう。でもなんで荷物の重量を量る必要があるのでしょうか。
飛行機は、重量が重くなるほど飛び立つのに大きな揚力を必要とします。揚力を得るために長い滑走路を走る必要がでてきます。軽い機体なら滑走路の半分もいかずに飛び立つことができますが、大きな機体であれば飛び立つのに時間がかかるのです。むろん空港の滑走路の長さには限界があり、重すぎると飛び立てなくなる恐れがありますし、着陸する際には尻もちをついてしまう原因にもなってしまいます。
そのため航空会社では、機体の総重量を量り、気圧や温度などの条件を加味して、離陸に必要な距離を計算しています。ドラマの中でも「V1」「VR」「V2」などとパイロットが言っているシーンがあります。意味としては
「V1」は離陸決心速度というもので、V1より速度がでている場合はトラブルが生じていても滑走路内で停止できない可能性があるため、離陸を継続しなければならない速度です。
「VR」はローテーションとも呼ばれており、機首引き上げ速度を指します。この速度に達すると、パイロットは機首を引き上げることができるようになります。これ以下の場合、機体が浮き上がらないようです。この時、飛行機の前方の車輪が地面から離れます。
「V2」は離陸した飛行機が安全に上昇を継続できるスピードです。離陸面上35ft(10.7m)の地点でV2に達します。
これらの速度を計算したうえで旅客機は飛んでいるのです。機体が軽ければこれらの速度に達するのが早いですが、重いと長々と滑走路を走る必要がでてくるのです。燃料代もかかってしまいます。そのため貨物を減らしたり、乗客を減らしたりして安全に飛べる状況にしているのです。
乗客の手荷物は出発直前にならないと分かりません。そこで航空会社は乗客の手荷物を量って制限を超えた分に超過料金を課すようにしています。荷物には料金を課せても、人間の体重に料金の上乗せが出来ないので、体格の大きい国の航空会社はこの点では損していますね。
しかし人間の体重に料金を加算する会社が現れました。アメリカ領サモアを拠点にしているサモア・エアーが、2013年に乗客と荷物の重量によって料金を決めることを決定しました。乗客は予約時に荷物の重さと体重を入力し、その合計重量によって料金が算出されます。同社の航空機のほとんどが12座席しかない小さな機体だということで、重量がもろに離発着に関係してくるんですね。WHOによるとサモア人は「世界で一番太っている民族」とされており、肥満人口も90%を超えるとのことですから、体重別料金を導入するのも頷けます。