タイタニック号といえば、レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットが演じた映画「タイタニック」をまず思い浮かべることでしょう。映画によって世界中の人に認知された大型客船です。イギリスのサウサンプトンからアメリカのニューヨークに向かっていました。安全性が高く評価されていたため「不沈船」と喧伝されていました。しかしこの船は処女航海の最中に、1912年4月15日に氷山に衝突し沈没してしまいます。
と、ここまでは多くの方がご存知かもしれません。ではタイタニックのシンボルでもある4本の煙突、なぜこんなにもあったのでしょうか。タイタニック号は当時としては最新鋭にして最大の船で、4万トンを超え、21ノット(約39km)の快速を誇りました。その巨体を早く動かすため、複数のエンジンで重油をたくさん燃やすため煙突が多く備えられました。大きい煙突を付ける理由は、重油を燃やした後に出る硫黄分を含んだ有害な排気ガスを吸わないようにするためでした。
そして当時は煙突が立派であればあるほど豪華客船の性能を証明するものと考えられていましたので、競うように他の船も煙突を大きくし、数も増やしています。
しかし、タイタニックが造られた1900年代には、造船技術も進み巨大な煙突を何本も必要としたわけではありませんでした。そのため、ボイラーと接続されているのは前から4本のうち3本目までした。一番後ろの1本はもくもくと煙を出すことなく、厨房の換気や蒸気タービンの換気のために設けられました。残りの一つは「無駄だろう」と感じますが、最新で最大の船の威厳を出すためにあえてダミーの煙突が付けられたのです。
「煙突多い方がかっこいい説」ならぬ、風潮は続いていきます。1935年に竣工したタイタニック号の倍近くの大きさを誇るフランスの「ノルマンディー」号。華麗さが売りの豪華客船も3本の煙突のうち、1本はダミーで、煙突の内部は家畜の収容室になっていたようです。船体外観には広く様々な角度で俯瞰しても調和のとれた均整な船形デザインを保つために、ダミーの煙突を設置し、実用性よりも外観や見栄えを良くした結果、「洋上の宮殿」と言われていました。ノルマンディー号の緻密に計算された船形デザインは、世界に衝撃を与え、のちに不朽の豪華客船と讃えられた。また建築や工業デザイン分野においても高く評価された船になっています。
タイタニック号やノルマンディー号に備え付けられていたダミーの煙突は一見すると無駄に見えるものですが、デザイン面など、違った意味で後世に影響を与えた船なんですね。