フライトレーダー24というアプリがあります。これは地図上に現在飛行機がどこを飛んでいるのかを見ることのできるアプリです。世界中たくさんの飛行機が飛んでいることが分かります。でもよく見るとヒマラヤ上空には飛行機が1機も飛んでいません。なんで上空を飛ばないのでしょうか。
ジェット機の巡航高度は10,000m前後です。高度が上がると空気が薄くなります。そのため、上に行くほど空気抵抗は少なくなり効率よく飛ぶことができますが、あまりに高いと空気が薄い分、エンジンに取り込む空気が少なくなってしまうため効率が悪くなります。バランスが良いのが10,000m前後となっています。
ヒマラヤの山はネパールと中国のあいだにありますが、エベレストのような8,000m級の山々がそびえています。ジェット機の巡航高度からしたら2,000m近く余裕があるので、「なんでヒマラヤの上を飛ばないんだろう?」と疑問に思うかもしれません。これにはいくつかの理由があります。
- 山の上には乱気流が発生する
都心のビル風のように山と山の間に強風が吹いたり、山に太陽があたって熱くなることで上昇気流が発生したりします。このように山の上の気流は不安定で、飛行機に大きな揺れを引き起こします。
- 気圧と酸素の回復ができない
ヒマラヤ上空を飛んでいた際、何らかの問題で機内の与圧ができなくなると、酸素濃度が下がってしまい気を失います。それを避けるため、上から酸素マスクが落ちてきて装着するわけですが、機内の与圧は依然として故障しているので与圧しなくてもよい高度約2,600mまで急降下しなければなりません。しかしヒマラヤ上空ではそこまで下がろうとすると地面にぶつかってしまうのです。
- エンジンが故障しても滑空する余裕がない
もしエンジンが止まっても、飛行機はすぐに墜落するわけではなく、滑空しながら降りていきます。その間に不時着できそうな海や、空港を探すのですが、ヒマラヤはそもそも高度が高いのでエンジンが止まって滑空していてもすぐに地面があらわれてしまい余裕が無いのです。
- 降りれる空港が無い
ヒマラヤにもいくつか空港はあるのですが、セスナ機対応の空港でジェット機が着陸できる空港はカトマンズ(ネパール)の空港しかありません。でもここは滑走路が1つしかないので、たくさんの飛行機が殺到した場合対応するのが難しいでしょう。
これらの理由から、多くの航空会社はヒマラヤの上空を飛んでいないのです。飛ばないにはちゃんとした理由があるんですね。